カズナリマン

ある女流作家の罪と罰のカズナリマンのレビュー・感想・評価

ある女流作家の罪と罰(2018年製作の映画)
4.0
おっさんおばちゃんの友情物語好き!

「ある女流作家の罪と罰」

今年のアカデミー賞でメリッサマッカーシーが主演女優賞にノミネートされた本作は、文書偽造で生計を立てていた実在の女性作家リー・イスラエルの自伝の映画化。

メリッサの女優賞よりも「作家による詐欺モノ面白そう!」と飛びついたのですが、予想していた「孤独な犯罪者」の話ではなく、都会の片隅で落ちぶれたモノ同士の友情を描いたなかなかの傑作でございました!

○ひとまずストーリー
かつてベストセラー作家だったリー(メリッサマッカーシー)は、今ではアルコールに溺れて仕事も続かず、家賃も滞納するなど、すっかり落ちぶれていた。どん底の生活から抜け出すため、大切にとっていた大女優キャサリン・ヘプバーンからの手紙を古書店に売ったリーは、セレブからの手紙がコレクター相手に高値で売れることを知る。旧式タイプライターを買ったリーは有名人の手紙の偽造をはじめ、それで生計を立てるようになるが…

物語はNYで一人暮らしをしている孤独な中年女性リーを追い続けます。

彼女の生活は派手ではないし、むしろ人を突き放すような性格悪いリーの周囲には誰も近寄ってこないんですが、そんな彼女の日常に、過去のあるパーティで出会ったというゲイの男、ジャックが入ってくるんですねーー。ずかずかと土足で。
でも、そんなジャックの強引なアプローチこそ、元ベストセラー作家というプライドと人嫌いという性格のおかげで「人との距離の詰め方」がわからなくなっているリーの心を開くのにちょうどよかったのかも。とにかく、二人が仲良くなっていく過程の会話がとても自然でいいんですよーー!オシャレな言葉も、名セリフめいた言葉もなくて。アカデミー賞脚色賞にノミネートされただけあります。

物語はリーが行った詐欺の内容にそってすすむのですが、その根っこにあるのは「一攫千金」などではなく、「貧乏な生活」と「ジャック」と、彼女の「プライド」。
ベストセラー作家がなせ詐欺に手を染めるようになったのか?また、なぜそれが生きがいになってしまったのか?この理由もなんかすごく納得できます。メリッサ・マッカーシー、うまいわぁ~。

本作をみて一番「近い」と思った映画は、「あるスキャンダルの覚書」でしょーか。あの映画のジュディ・デンチの孤独と、本作のメリッサマッカーシーの孤独ってなんかとても身近で怖くて、感情移入できやすいものみたいです、自分にとって。

地味なお話ですが、最小限の場所とキャラクターで語る、変な味わい深さが魅力的な映画です。こーゆーのが好きな人にはなかなかたまらん一作かもー。