まりぃくりすてぃ

THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

4.5
完璧な出来ばえ! それを序盤にして知る。画にも音にも話にもマイナス要素が一つもないまま淀みなくすべてが展開していったから。

俳優たちの発する全セリフが、日本語として最適速度。これって意外に稀有なこと。意味がしっかり頭に残る上に、滞留まったくなし。一人一人の声質も際立って、選びぬかれた(シュートあり・スライダーありの?)柔軟で粋でさえある言葉たちがじつに小気味よし。
桜井ユキさんの「ハイッ」「……ハイッ」「…ハイッ」「…………ハイッ」はガール度が恒星級。これ私の生活にも使わせてもらお。

だけれども、私は一つだけ難癖をつけることを途中で考えついた。
「この映画には、独自の色彩がない」
照明色をはじめとして相当にカラフル映画なんだけども、どっかで見たような、見すぎたような色遣い(←クラブとか、最近の米国映画とかの)ばかりであって、この「リミット・オブ・スリーピング・ビューティー」だけが描き出せた“かけがえのない色”っていうのがない。“オーロラ”がキーワードの一つであるわりに。
だから私、満点シナリオ・満点演出・満点演技の映画であろうことを認めちゃって以降は、全体像にはあまり注意を払わず、画面上に特別な色をたった一つでも見つけられるかどうかの「目の旅」に入った。

一応ね、つながっている時の桜井さんの肌と高橋一生さんの肌が、違う色から彩度と明度をしばしば揃えるところまで変化し、時によってはムンクの「接吻」みたく完全に一続きに溶け合っちゃってた、そんな場面で桜井さんの胸の先っぽのピンクが神々しい可憐さだった!
これでヨシとしようか。
あと、屋上の布につきまくった色もよかったからOK。やっぱスゴ腕!



あら? 変なところに私が気を取られている間に、物語がちょっと前のめっちゃってるよ。そのせいで、掘りが浅くなってるよ。
銃撃戦はまあいいとして、「あたし=俺」の処理云々。テーマの最深部がこれだっていうのは、ちょっとこれまた既視感あるんですけど。(最近の邦画だったら「めがみさま」とかね。)
そもそも、自殺する蛮勇など持たない私たち普通人(二宮監督ふくむ)が自殺モチーフを軽々しく取り入れるのは、兵士になる気がないまま軍事を語っちゃう政治家同様、本当は陳腐だね。
ということで、後半、急遽減点。満点行けたはずなのに惜しかった。ユメ迷子ちゃんが“わりと単純な恋愛迷路”を脱する若い物語、で終わっちゃったのかもしれなくてね。