えむえすぷらす

寝ても覚めてものえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
5.0
強烈な一本。似たような話、例えば披露宴に来た新婦だかの友達に一目惚れして離婚、その子と結婚したという凄まじい展開の話は聞いた事がある。それに近いものを感じる展開も含まれる。

朝子が連れ出された時、そこで後悔してないような事を思い込みつつ東京で出会った婚約者亮平との出来事が反復される。そしてこの5年間進まなかった、戻ったという自己認識が実は間違いだったと気づく。着実に亮平と前に進んでいた。亮平は亮平であって麦のイミテーションではないのだ。

麦は運命だったと朝子は思っているけど、朝子があれだけ嫌った亮平を受け入れたのは大震災で電車が動かず歩いている最中だった。亮平との関係でもまた同じぐらい奇跡があったのである。

麦は自分の代わりならいるからと朝子の為に全てを投げようとする。一見愛のために見えるんですがあの行動は何にも縛られないし引き止めることも出来ない。何も所有しないし何者にも所有されない。それは7年前の失踪でも分かってる事である。
7年前の麦との出来事こそ夢だった。そして現実を捨てて夢の中へ回帰しようとしても既に自分が変わっている事に気付き長い夢からやっと目覚めた。

朝子は自分自身に共感なんかしてないので(というか感情からくる衝動を理解しかねていて理解した瞬間に全てが反転した)、観客が共感できるような作りにはなってない。
どうしてああなるのか観察する事を求める演出ラインで徹底されている。だから嫌なもの見せられても見続けられる。

最後のエピローグはなくても良かったのではないかとは思ったがまた見たら意見が変わるかもしれない。