Koutaro

さよならの朝に約束の花をかざろうのKoutaroのレビュー・感想・評価

3.0
テーマは良い。絵も美しい。舞台設定や雰囲気も王道のファンタジーで好みではある。描かれている内容も粒ぞろいであり、個々を取り上げていけばすごく面白いものを扱っている。にもかかわらず、それらをすべて組み合わせてしまったために、全体のテーマがぼやけてしまった印象。
二時間映画一本で描き切るには少し欲張りすぎたのではないか。

不老長寿の少女が、拾った赤子を育て、最終的には彼を看取ることになるという長大な出会いと別れの物語ではあるのだが、長編映画としての尺に収めるために、そして後述の戦闘シーンを描くために、二人のエピソードを十分に掘り下げることができず、かなり浅いところでさらさらとストーリーが進行してしまう。
感情移入ができないわけではないが、どうにも物足りない。「まあ、いい映画だったね」くらいの感想で終わってしまう。
王道ファンタジーを描くからには派手な戦闘シーンがなければ、という固定観念があったのかどうかは定かでないが、いっそその部分を潔く廃して、異種族間の親子の愛情と別れをディープに描いたヒューマンドラマに仕立てたほうが作品として一貫性があったのではないかと、残念に思わずにはいられない。

余談ではあるが、「織物」を意味するオリジナル言語を「人生」の意味でも用いる描写は非常に巧緻で素晴らしかった。
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