原作付きとは言いつつも、実態はほぼ完全なオリジナルストーリーということではあるが、予想以上に脚本が良い。
古き良き昭和の撮影所の情景は、松竹と、当時を知る山田洋次監督だからこそ描けたもので、おそらく今後はもう、なかなか当時の空気感をありのままに表現できる作品は現れないのではないかと思うと、それだけでも一つの価値が生まれるように思える。
個人的には過去編の部分がこの作品の見どころ。それだけに、この映画独自の、菅田将暉ら演じる過去の主人公たちと、現代編で描かれる、原作に即した(と思しき)キャラクター像との乖離はやや気になる部分ではある。
過去編と現代編の間には、最低でもあと映画もう一本分何かしらドラマを挟まないと、さすがにああはならないのではないか。
惜しい点はいくつかあるものの、間違いなく良作ではある。
