Koutaro

耳をすませばのKoutaroのレビュー・感想・評価

耳をすませば(2020年製作の映画)
1.8
やりたいことをやろうとしすぎてすべてがとっ散らかっている。
ターゲット層がどこなのかも今一つ定まっている気がしないし、結局何を伝えたいのかもよくわからない。
もはやテーマも何もあったものではないので、鑑賞後に心に残るものが何もない。

原作を回想で振り返ること自体はいい。
原作の出来事をあえて改変し、独自路線に進むことも悪いことではない。
あえてテーマ曲を「翼をください」に変更したことも、納得できるかどうかはさておいて、思い出の曲を日本の歌にするという必然性はつけられなくもない。
ただ、原作の展開を改変するのであれば、原作シーンをそっくりそのまま真似させた序盤のあれは必要なかったのではなかろうか。
情感も何もないものまねを見せられている印象しかないし、そんなことをやっている割には原作へのリスペクトをどうにも感じられない。
ジブリのキラーコンテンツを下敷きにしているのだから、原作で描かれていた部分は観客にとって既知の情報として割り切って、10年後の物語に比重を振り切り本当に重要な場面だけポイントで回想を挟む程度で良かったのではないか。
原作の展開の改変についても、どうにもポイントがズレている印象。
前述通りなぞる必要もない展開をそっくりモノマネさせたかと思えば、その部分を改変してしまうと10年後の未来に繋がらないだろうという部分を平然と変えてしまっている。
本作で描かれている中学時代の物語では、この二人がどうして10年も遠距離恋愛を続けられているのか全く理解ができない。

そもそも本作で描きたかったテーマは夢なのか、恋愛なのか。
両方をうまくまとめたかったのだろうとは想像できるが、結果的には前半部分が「夢」の要素だけで構成され、終盤30分で急激に「恋愛」要素が強くなるという、水の上に油が浮いているような印象を受ける。
正直言ってこの構成なら恋愛要素は邪魔にしか感じられない。遠距離でお互いが支え合っている程度の味付けでちょうどよい。

結局、独自解釈の「耳をすませば」をやりたいのか、それとも原作の正統な続編をやりたかったのか、心の成長を描きたかったのか、恋愛映画をやりたかったのか、まとまらないままのプロトタイプを見せられたような感覚だった。
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