エイデン

アルファ 帰還(かえ)りし者たちのエイデンのレビュー・感想・評価

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2万年前、ヨーロッパ
狩りを行っていた一団が獲物の群れを崖に追い詰めていた
獲物の群れは追い立てられて崖下へ次々と転落して行くが、残った1頭が一矢報いんと向き直る
今回が初めての狩りだった首長タウの息子ケダは、それを見て怖気付き背を向けてしまう
襲われたケダは突進を食らったばかりか、その角に服が引っ掛かり、崖から転落してしまうのだった
1週間前
ケダは若者の集団に混じり、一人前になるための訓練を受けていた
ケダはタウに目をかけられていたものの、首長を継ぐ素質があることを証明するため、他の若者と同じ訓練に参加させられていたのだ
無事に合格したケダは、大人達に混じり一族の存亡を賭け年に1度狩り行われている“大いなる獣”の狩りに参加することになる
しかしケダの母ローは、心優しい息子は狩りに向いていないと心配を隠せずにいた
やがて狩場に向けた長い旅が始まり、その過程でケダはタウから生きる上での教えを授かっていく
祖先の残した道筋を辿って行く途中も母の懸念通り、ケダは獲物にとどめを刺すことを恐れてタウを失望させてしまう
ある夜 一行は闇の中に何かの気配を感じる
気配が過ぎたと安心した矢先、ケダと共に訓練を乗り越えた若者が猛獣の餌食となり、タウは「生きるためには強くあらねばならない」と語るのだった
またある夜には、タウはケダの腕に星を象った刺青を施す
その時 遠くからオオカミの遠吠えが聞こえ、タウはそれが群れのボス“アルファ”のものであると説明する
アルファは勇敢に群れを導く存在で、ケダにも一族を率いる者としてそうあれと教えるのだった
そして明くる日、大いなる獣の群れを見つけた一行だったが、ケダはタウの目の前で崖から落下する
上からも下からも行くことができない崖の中程にケダは引っかかり、その身体は動くことはなかった
動揺するタウに対し仲間達はケダが死んだことを伝え、一行は狩りの成果と深い悲しみを背負い村へと帰還していく
だがケダは翌朝になって目を覚ます
再び落下したケダだったが、大雨で崖下は川になっており流されながらも命を取り留めるのだった
怪我した右脚を引きずりながら崖の上へと戻ったケダだったが、そこには既に父や仲間達の姿は無く、自分を慰霊した跡を発見し、死んだものと思われていると判明する
更にオオカミの群れに追われたケダは、1匹に手傷を負わせながら何とか木の上に身を隠す
夜が明けるとオオカミの群れは姿を消していたが、怪我を負わせたオオカミだけが弱って動けずにいるのを見つける
槍を構えるケダはどうしても殺すことができず、オオカミを介抱することを決めるが・・・



紀元前を舞台に、少年とオオカミの友情を描いたアドベンチャー映画

レビューしてる人少ないけどこれは面白い
冒険を通してケダが成長していく様子と、バディムービーとしての面白さを見事に引き出している
数々の苦難に遭っていく1人と1匹は全霊で応援したくなる良いキャラクターをしてるし、スペクタクルもあって冒険映画としての面白さも十分
また幻想的でもある美しい情景も物語を盛り上げてくれる

冒険を経て、相容れないはずだった1人と1匹が友情を築き上げていくのが王道なんだけど面白い
戦士にあるまじき優しさを持っていたケダだからこそできた新たな友情の形は『ヒックとドラゴン』あたりでも描かれたけど美しい
加えてケダ自身も冒険を通して生きることの本質を学び、相棒とともにアルファへと変わっていく様は生命の力強ささえ感じさせる
冒頭では気弱で自信無さげだったケダと、まさに野獣といった風だったアルファが、1人の戦士とワンちゃんの顔になるのは、観てる側からしても愛着が湧いてステキ

『モールス』で主演を務めたコディ・スミット=マクフィーの演技も素晴らしいんだけど、アルファも同様に素晴らしい演技を見せてくれる
アルファは本物のオオカミとCG、ウルフドッグのチャックくんが場面場面で代わる代わる登場しており、人類の敵から愛くるしいワンちゃんになるまでを魅力的に描き出している

こんなてんこ盛りな設定も90分強でまとめ上げてるのも見事だし、話してる言語さえ2年を費やして作り上げた架空の言語というから驚きしかない
過酷な環境をたくましく生きる1人と1匹の姿に共感しながら、生涯の友とも言われる人類と犬の友情の第1歩を鮮やかに描いた隠れた名作なので、ぜひこの作り込まれた世界を観てほしい
ワンちゃん飼いたくなっちゃう
エイデン

エイデン