昨年『レッド・ロケット』という怪作をぶち込んできたショーン・ベイカー監督の長編デビュー作。
色んなところで聞いた評判から「なんかヤバい作品なんだろうな」とは思っていたが、いやはや、これは凄い。
まだ消化しきれていないので分かんないけど、下手したらオールタイムベストに入ってくるかも・・・。
衝撃のラストについては、画面内で行われる行為同様、我々の言語化の手を猛ダッシュで振り切っていくようなところがある。
映画のポスターアートには、『二人を待ち受けるのは、ハッピーエンドさえ凌ぐ誰も観たことのないマジカルエンド』とあるが、マジカルエンド、という表現から印象付けられるポジティブなラストでもないよな。
どちらかというと、白昼夢の中に投げ出されたような気持ちになった。そういう意味では「ミラージュエンド」という表現が適切と思うがどうでしょう。
ということで、ラストシーンは個人的には全く咀嚼できていないが、無理に咀嚼せずに、これを異物のまま持っておくのが、この映画との付き合い方として良いような気もしている。
さて、各論に移ると、まず本作、とっにかくエモい。
それは本作が、「交じりっけなしの子ども視点」というのを高純度で再現出来ていることに由来していると思う。
カメラワークしかり景色の美しさしかり、「言われてみて初めて気づいたけど、確かに俺、子どもの頃こんな風に世界を見ていたよな」
と感じさせてくれる何かが、ここにはあった。
(そういう意味で、「子どもってこうだよね」という大人の視点がさしはさまれていないリアルガチ子ども目線作品の個人的一位、中勘助氏の小説『銀の匙』を想起したもの)
また、これは『レッド・ロケット』のレビューでも触れたが、私は同監督の人間の描き方が超絶好きだ。
本作における主人公親子(特に母親)がしているのって、「ただ生きている」だけなんだよな。
無目的的に、ただ生き抜いている。
(レッド・ロケットの主人公同様)彼女は安直にレッテルを張るなら「カス親」だと言って良いと思うんだけれど、それでもただ、とにかく生きようとしているのは確か。
同監督はこういった存在にスポットを当てることで、「人を思いやることの美しさ」だとか「親子の愛情の美しさ」だとか、そういうあらゆる意味が蒸留され尽くした結果としての「人がただ生きようとすることの美しさ」を描こうとしているように思える。
そして、出来ていると思う。拍手。
最後に俳優陣について。
まず主人公親子。エッぐいて。
二人とも演技未経験て。
特にムーニー役を演じたあの子役よ。。
日常の自然さもやっばいけど、最後の落涙のシーンの凄まじさを見て、ちょっと鳥肌立ちました。
他のメンバーもみんな良い。リアル。まじでいるやつ。ここまでクオリティコントロールで来ているということはやはり監督の品質マネジメントの成果なんでしょうな。
あ、ウィレム・デフォーが良い役で出ているのは初めて見たかも笑。彼も最高だった。
ということで、なんかよく分からんけど大傑作だと思います。
お付き合いが長くなりそうな作品。