柏エシディシ

ビール・ストリートの恋人たちの柏エシディシのレビュー・感想・評価

4.0
映画とは音と映像の総合芸術であるのだから、こんな言い方は陳腐に過ぎるのですが、本作はまさに音と映像の映画。

前作「ムーンライト」ではビビッドなブルーのカラリングが印象的だったジェームズ・ラクストンの撮影の本作のテーマは暖かなイエローとグリーン。
酷薄な現実から恋人たちを守るような色彩。
登場人物たちに寄り添うようなカメラワークや、こちらもムーンライトから引き続いて印象的な人物がスクリーン越しに見つめてくるバストアップカットなど、「語りかけて来る様な」撮影が極上過ぎる
(アカデミーノミニー無し!今回はライバルが多いにしても、何故だー!?)

そして、音楽!コルトレーンやマイルスの既存曲の使い方も素晴らしいのですが、ジャズ的なスコアでブラックカルチャーと当時の息吹を感じさせながら、ストリングスの流麗な響きが作品の繊細さや欧州的な柔らかさを作品に加えていて、今までの所謂ブラックムービーとは違ったユニバーサルな魅力を加えているように思います。こちらも「ムーンライト」からのジェンキンス組、ニコラス・ブリステル。サントラマストバイ。

(少し映画から脱線しますが、マイルス・デイビスがギル・エヴァンスやビル・エヴァンスの白人的な素養を自ら取り込みながら、本人は強い黒人的意識を持ちながら、他の黒人ミュージシャンとは一線を画した進化を進めていった所と、監督とラクストン、ブリステルとの関係との類似性を感じたりもしたり…閑話休題)

浅学のため原作のジェームズ・ボールドウィンに馴染みは無かったのだけれど、彼自身の言葉が聴ける、昨年公開された「私はあなたの二グロではない」を観ていて本当に良かった。
本作の単なるメロドラマを越えた悲痛さ、怒り。
彼の感性の一端に少しでも触れていたことが、本作を理解する助けになった。
そして、ある意味「映画的な」安易な結末に至らずとも、ある種の「敗北」を描いた映画であるとしても、それでも「愛は強い。愛こそすべて」と静かに強く宣言する映画である事に心が強く動かされた。

本当に素晴らしい映画。
これからアトロクのバリー・ジェンキンス監督のインタビューを楽しみに聴きたいと思います。