砂場

ビール・ストリートの恋人たちの砂場のレビュー・感想・評価

4.5
これは超絶大傑作だった!!思い出すと前作『ムーンライト』が黒人でLGBTという設定ですごく良作だったんだけどちょっと過剰にマイノリティ映画になってる感があり入り込めなかったのだが、今作はごく普通の黒人カップルに起きる事態を描いておりぐ〜とのめり込むことができた。

まず全体に言えるがこれは前作から引き続き非常に美しい静謐なトーン、どの場面も絵画のようだ。
それにしてもこの監督の作家性は素晴らしいと思う、細部のセリフ一つ、役者の動き一つでガラッと空気を変えることができる。
前半の義母の驚くべき暴言と混乱、白人警官の狂気を孕む表情、レイプされた女性の錯乱ぶり、、、、
このトーンの中で家族、友人たちとの小さな幸せと突然の事態が描かれる。ブラックムービーの隆盛は確かな現代において攻撃的、政治的メッセージを多分に含む音楽がかからない。『ファーストマン』のようにギルスコットヘロンを流すような選択もあっただろうが、本作の静かなジャズは内に秘めた怒りをよく表していると思う。
この映画ではもちろん人種差別問題が主題ではあるが、より内面化され外部からは見えにくいものとして描かれている。
本作の背景70年代に比べ現在では法的にも黒人差別はなくなっているのだが、家も借りるのに苦労するようなレベルでは昔と何ら変わっていないのではないか、、、、

『グリーン・ブック』という凡作がアカデミー作品賞をとったが、この『ビールストリート』こそ今リアルに見られるべきだし、もはや古典的名作の雰囲気もある。
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