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デューン 砂の惑星PART2の砂場のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.0
ヴィルヌーヴ監督の『デューン砂の惑星 Part2』、待ってましたよ〜
全体的に映像のクオリティが最高でした!砂漠の広大さ、砂嵐の恐怖、敵方の採掘船とのバトルの迫力、シャラメ、ゼンデイヤは美しかった。それにしてもゼンデイヤ、フローレンス・ピュー、レア・セドゥ、アニャ・テイラー=ジョイという人気若手女優が一度に出る映画ってよく考えるとすごいな、、、、

以下ネタバレあり、多少文句ありですがよろしくお願いします

『デューン』というとやはり、登場人物とかメカの造形が魅力のかなりの部分を占めるわけです。今作はPart1以上にディヴィッド・リンチ版へのリスペクトを感じました。ただそうであるが故にディヴィッド・リンチの作りあげた膿だらけのハルコネン、グロテスクなナビゲーターの造形の圧倒的な気持ち悪さ、スティングの怪しげ感がさすがだなあ〜と思ってしまう。

ヴィルヌーヴって良くも悪くも優等生的に映像センスがいいので、ぶっ飛んだグロさという点ではおとなしめなのであった。『ブレードランナー』に出てきた、"二つで十分ですよ"おっちゃんみたいな緩さが『2049』には無かったし。ハルコネンもフェイド=ラウサもスッキリして綺麗め。しかもナビゲーターは出ませんでした(涙)ただ、映像のセンスというか美的な造形は素晴らしく見る価値はあります。

劇場で今から「デューン」をみるであろう若い男女が、ポスターを指してきっとこっち(シャラメ)が良い方で、ハゲたちが悪い方だよね?と言っていた。その見立てはあながちまちがっていないが、実際はもっと複雑な話であった。

前半まではナチスとか旧ソ連のような独裁国家ハルコネン家vs善良な砂漠の民フレメンという構図、そこによそ者のポールが救世主として現れるような英雄譚だった。後半になると様相は一変する。母ジェシカが予言を利用しフレメン内の原理主義者を扇動する結果一気に戦争に傾斜する。ポールはそんな母に反発し戦争を回避するのだが結局はフレメンを率いて戦うことになった。

ハルコネンを撃退し、皇帝に迫る。皇帝こそが謀略によりアトレイデス家を滅ぼした黒幕だったのだ。皇帝を跪かせるとポールが皇位を継いだ。皇位継承を認めない大領諸侯に対し総攻撃をかける、一人チャニだけが厳しい目で砂漠を見つめるのだった。

この物語は平和を愛する青年ポールが、暴君へと変貌してゆく話ですね。なので勧善懲悪のエンタメを期待するとスッキリしない。西洋帝国主義が植民地に対して行ってきたことを批判する視座をヴィルヌーヴは持っているように思います。本作ではフレメンが原理主義に傾倒していく状況が描かれている。ベネ・ゲセリット教会のジェシカの扇動によりフレメンは原理主義化するんですね。

『デューン』は『アラビアのロレンス』の影響を受けていると言われる、確かに帝国列強による植民地政策などは参考にした部分も多いだろう。『アラビアのロレンス』で描かれる時代はドイツとオスマントルコが手を組もうとしていた、イギリスはそれを妨害するべくオスマントルコからのアラブ民族独立運動を扇動しオスマントルコを解体したのだった。アラブ民族独立運動にイギリス人ながら深く賛同し運動のリーダーとなったロレンスは、ポールと母ジェシカに重なる。デビッド・リーンがロレンスを英雄だけではなく、狂人であり、夢想家であり、イギリスの駒であったと多層的に描いたように、ヴィルヌーヴもポールを単なる民族独立の英雄としては描いていない。ラストで示唆されるように暴君になりそうだし、ベネ・ゲセリット教会の駒として動かされているのだった。

映画単体として見るとちょっと本作の終わり方はスッキリしない。スターウォーズがEP4から『帝国の逆襲』にかけて単体としても完結してて十分面白いのは流石だなと改めて思う。Part3が早く見たいですね
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