Oto

スリー・ビルボードのOtoのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.1
ありそうでなかった脚本。どんでん返しってほどじゃないけど予想外の展開で、まさかこの人が主役なんだ…っていう気持ち良さは珍しい。

全体として凄く斬新な事してるわけではないし前半は少し退屈だったけど、印象に残ったシーンが多い。
オレンジジュース、炎からの脱出、barでの引っ掻き、小人とのディナー後とか、"後出し"の魅せ方が凄く好き。

窓から落とすディクソンとか署長の行動とかTaxi driverの終盤みたいな突飛なシーンも多いけど、
2人が変わる物語としてのリアルさは保たれていて、善人と悪人が紙一重って感じは伝わった。
娘との喧嘩とか含めてキャラ達の素が描かれてる分、欠陥のある人間たちが努力して変わろうとしてる葛藤が伝わって刺さった。

ラストもスッキリした終わりにできたはずだけどそうしないのがらしさで、新署長の陰謀なのかな〜(店来てる時点で犯人なのは確定だし)とかその後どうするのかな〜(殺さないんだろうな〜)とか考えるの楽しい。殺しかけた相手に救われて、その2人が同じ標的に向かってドライブしてる皮肉とか素晴らしいよね

ユーモアもいいよな〜笑いが結構起きてて、色んな感情が共存してたので、トロント観客賞も納得。監督が北野武ファンって聞いて納得したけど,見るドレッドの極端に暴力的な言動で笑いが起こってた.個人的には,「(c*ntではなく)oldは余計だよ!!」っていうセリフがツボだった.
「怒りが怒りを来す」も重要なテーマなのに19歳の動物園娘に言わせたり重たくし過ぎないし、怒りを堪えて負のループを止めたのはミルドレッドの"Be nice to her, Charlie."だったんだと思う

NirvanaのIn uteroが娘の部屋にあったのは「Rape me」の暗示だと思ってる。ディクソン母の上にいた亀とか気付いてない小ネタとか含蓄も多そう.

(解説読んで
ディクソンはゲイだとは思ったけど,実は署長を愛していたというのは気づかなかった.ビリヤードのときにディクソンが着てたTシャツは"悪いやつがヒーローになる"っていう物語のアメコミらしい.伏線はあったんだね
カトリック司祭のレイプのくだりは『スポットライト』だろうなと思ったけど,"ワイオミングのゲイ殺し"は『ブロークバックマウンテン』で,"キューバのゲイ迫害"とか,"砂の多いところ"にも元ネタがあるみたい.鹿は『プラトーン』らしい.芸が細かすぎる!!(タランティーノに憧れて脚本家になったらしく,細部へのこだわりはそこから来てるのかも)
‪最近の作品から古き名作まで幅広く取り入れてて、映画オタクが観ると何倍も楽しい映画なんだと思うけど、自分はこれから観る作品ばかりなので楽しみ。‬

子供らを被害者に〜加害者にもせずに〜
この街で暮らすため〜まず何をすべきだろ〜♪
(みんな被害者でみんな加害者なのかも)

追記:マクドーマンドのスピーチ素晴らしすぎた。脚本賞ゲットアウトは驚いたけど、全体的に(作品賞にしても)マイノリティを盛り上げる流れが来ていてとても嬉しい。
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