"怒りは怒りを来す"
フォロワーさんのオススメで観た今作、同じクライム作品であるウィンドリバーとはまた違った土地柄の色が浮き彫りにされた作品故に複雑な感情が交錯する作品でした。
主人公ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は娘を殺され、犯人を逮捕できない警察に憤りを覚えていた。そこで無能な警察に対し、抗議の意味で3枚の広告看板を打ち建てる。
事の発端であるミルドレッドの行き場の無い怒りと憎しみが思わぬ連鎖を生むことになります。
まず、ウィロビー署長の取り巻き。彼は町中の住人に慕われており、中でも警察は偉大なる存在らしい。
よってミルドレッドが最愛の娘を亡くした事よりもウィロビー署長が非難される事に憤りと怒りの矛先が向けられるというなんともおかしな方向へ発展していく。
劇中の台詞の"怒りは怒りを来す"とは正にこの事で、怒りの連鎖によりやがて事件の本質を見失ってしまう。
警察署長であるウィロビー署長はこの怒りの連鎖を食い止める為に、自らの死によって事態を収束させようとしたのだろう。
残念ながらこの作品の登場人物には誰にも共感出来なかったけれど、気に入らないやつは片っ端からボコボコにしてきたバリバリのレイシストだったディクソン巡査が公正し、ミルドレッドに寄り添うようになるラストはなんだかとても嬉しかった。
彼女の行き場の無い復讐譚は希望という一筋の光が差したことにより幕を閉じたのだ。
舞台となるのはアメリカ西部のミズーリ州。ミズーリ州と言えば白人警察が丸腰の黒人青年を不当に銃殺した事件が記憶に新しい。
このミズーリの土地もまた、根深い差別が蔓延る閉鎖的なコミュニティーだということは言うまでも無い。
クライムサスペンスという意味では捻りは無いが、最後まで集中して観れるヒューマンドラマでした。