カツマ

アルカディアのカツマのレビュー・感想・評価

アルカディア(2017年製作の映画)
3.8
人の感性に一貫性はない。恐怖の対象もしかり。ある事象をこの世の幸福だと思う者もいれば、同じく死よりも恐ろしいと思う者もいる。基本的に前者がマイノリティであればあるほど、それはカルトであると言われやすい。この映画はそんなカルトな幸福論を持った村を舞台にして、謎への解答を小出しにすることで、ラストへの緊張感を高めていく、かなり異色なカルト作品だ。

主演の二人は監督、脚本、撮影など全てを担っていて、そのせいか低予算ならではの手作り感をアイディアで突破していくオタク的なセンスが光る。海外のファンタ系映画祭で軒並み絶賛されており、日本ではシネマカリテのカリコレで限定上映されました。そのカルト集団の潜む村に帰ってきた兄弟が見たものとは、果たして何か。

〜あらすじ〜

10年前カルト集団の潜む村アルカディアから脱走したジャスティンとアーロンの兄弟。彼らのもとにアルカディアから一本のビデオテープが送られてきた。そこには『昇天する』という謎のワードを語る女性の姿が。兄ジャスティンは村の秘密を知っていたが、まだ幼かった弟のアーロンはその頃の記憶が曖昧で、内心今の貧乏な生活よりも村に帰ってやり直したいと思っていた。
そんな弟の強い意思が兄へと伝わり、二人は10年ぶりに村へと戻ることになった。村人たちへの警戒心を隠さない兄と、徐々に打ち解けていく弟。だが、すでに異変は起こっていた。空から舞ってくる写真、奇妙な儀式、その村で行われている恐るべき出来事とは果たして何か・・。

〜見どころと感想〜

冒頭から終盤まで一貫して核心へのズラしが行われていて、恐怖の対象が見えづらいままにクライマックスを迎える。そして、その真相が解けた時、一気に物語は転換し、エンドロールへと突入。途中までは摩訶不思議な雰囲気がモヤモヤと続くも、終盤での駆け足ダッシュは正に爆走。バタバタと終わってエンドロールが落ちてきます。

異色のSF、心理的なカルト。限りある人生を生きることへの讃歌が込められているのだとすれば、ぶっ飛んでいるようで命題はシンプルなのかなと思いました。好き嫌いはガッツリ分かれる作品でしょう。ホラーとSFの中間あたり、シャマランの『ヴィレッジ』やギャレス・エヴァンスの『アポストル』あたりとの類似性まで感じられる、謎が謎を呼ぶ灰汁の強いカルト臭が魅力的な作品でした。

〜あとがき〜

恐らくこのレビューが今年最後の一本になりそうです。
今年も一年ありがとうございました。
固めの文章にも関わらずいいねやコメントをくださって感謝感謝です^ ^
皆さまのレビューを読むのも本当に楽しくて、日々映画鑑賞の楽しさを教えてもらっている気がします。

来年もマイペースにレビューをアップしていきたいと思っていますので、何卒よろしくお願い致します笑
それでは、よいお年をお過ごしください。
カツマ

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