えむえすぷらす

鈴木家の嘘のえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

鈴木家の嘘(2018年製作の映画)
5.0
冒頭、いきなり登場人物が一人退場っておい、という始まり。バランスが変な映画で笑いあり怒りありスピリチュアルありだけど大嘘がない。なのに「鈴木家の嘘」とは一人の母親のためについた嘘を巡るシリアスな物語でもあるからだろう。

意図的に棘が仕込まれている。ただその棘自体理由が見えると一気に人物像が反転する。「あの人は迷惑だ」的な断定をした登場人物の方が偏見にまみれていた事が明らかにされる。そういう形で棘が回収される事である事で一生涯逃れることの出来ない罪悪感と対峙して戦っている人達を愛おしくも描いている。

物語は鈴木家の父、母、妹の三人の受容を描いている。父はある事が知りたくてソープランドに行き娘に何をしているのかと思われたり、妹は何も知らない人が近づこうとカッコをつけて言った「暴言」にキレたりする。そして母はなんでも信じようとする。

そうしている中で起きていたアルゼンチンにいる兄について全てが瓦解して母も全てを知った後になおスピリチュアルなお人が登場するのは何故かと言えば、それでも理解したいという気持ちが三人の中にあったから。その事を見せるためものだとすれば腑に落ちる。

そういう作品なので最後もなお知ろうという形で前に進み始めた三人の出発で終える。破損していた部分は修理されている事を見せる事でミッシングピースはあるけど立ち止まっているだけではないそんな家族の戦い方が描かれていた。

妹役の人がかわいらしく時にブチ切れたりいろんな表情を演じていてとっても良かった。また岸部一徳さんが演じた父がソープランドに行くというありそうでない感じの父親役、原日出子さんが夫と娘の思いと思いっきりズレた事を語っている所など的確な配役だった。

変な作品なので身構えて見て欲しい。でも決して後味悪くはないのです。不思議な映画です。