高橋

デス・ウィッシュの高橋のレビュー・感想・評価

デス・ウィッシュ(2017年製作の映画)
2.0
 記憶に残るような映像があるとはとてもいえないような映画であるのだが、そのなかでもまだかろうじて覚えている画面を挙げようと思う。
 たとえば冒頭の食卓のシーンは、ブルース・ウィリス演じる夫とその妻が語らい、そこへおそらく自室にて大学の合格通知を見たのであろう娘の喜びの奇声が届き、夫婦はにこやかにしている……といった具合に進む、まあ微笑ましいものなのだが、ここでは大学生になり家を出るだろう娘とそれを優しく送り出す夫婦を、食卓のある構図のなかで処理している。そして、このシーンの次に、娘のサッカー試合を並び立って見つめる夫婦のショットがつづくのだから、この家族の和やかな関係性がうかがえる。
 しかしその後、強盗に入られることで家庭は崩壊させられる。妻の葬式後、ブルース・ウィリスが義父の車に乗るシーンがあり、ここでは車内のブルース・ウィリスと義父を映す平凡な切り返しショットがしばらくつづき、このまま悲嘆にくれるこの男の物語がずるずるとつづくのであろうかと思われるのだが、義父が急ブレーキを踏むことでその物語の流れは断ち切られる。義父は、なにもいわず車外へ出てなにやらある方向を見つめ、またすぐさま車に乗りこむと、急発進する。そこには密猟者がいたようで、義父を容赦なくかれらに向けて銃を撃つのである。ここでは、なにも密猟者を追い払う義父とその銃が事件として重要なのではなく、走っていた自動車が何の前触れもなく急に停止したことが映画的な事件を形づくっているのである。
 また、スプリットスクリーンが使われている場面もあるが、これは外科医と処刑人という二面性をこれみよがしに提示しているようで、好みではない。
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