まりぃくりすてぃ

女の一生のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

女の一生(2016年製作の映画)
3.0
暇な人向けの綺麗な映画。眠れる。

貴族階級の弱者、である善良なお嫁さんの田舎物語がぽんぽん進む中、序盤のヤマである“初夜”と中盤の“廊下で息子暴れる”の2シーンだけが奇妙に長い。ほかに、のちに「家を売却する以外ありません」を懇々と説く管財人の台詞のわかりやすさが、輝いてた。────そういったフェルマータをほかにもふんだんに散りばめれば、もっと個性的な名画になったかも。

映画・小説(19世紀後半の大ベストセラー)ともに、原題は『(一つの)人生』。一人の女の全生涯、という大河的な意味まではない。
執筆当時アラスリーだった男子モーパッサンが、“善良で見目麗しく感受性豊かな女子”の内側に(愛しさ込めて、たぶん心地よく)入り込んで語ってるんだが、ざっと原作の特徴はこう。
①風景描写と人物外形描写がみっちり
②通俗的魅力の高い「事件」を適宜配置
③心理描写は(事件時以外はおおむね)ストレートで説明的
④思想性は高すぎず、さほど理屈っぽくもない
・・・・元々たいへん映画化しやすい種類の小説だったと私は思う。譬喩の連なる丹念な文章も、キャメラ一つで楽々「映像美」へと移し替え可能だもんね。それは結果が証明してること。
まずは、スタッフは美人女優を力入れて選んだ。“金髪・碧眼”にしなかったのは、忠実すぎない映画にするんだという決意で? それとも何となく?
顔アップ初夜(←ここだけ独自色シッカリなのは確か)以降は閨房カンケイ(獣性いろいろいわれる夫の押し引きや、妻の側からシタクナル瞬間)には触れず、夫婦に口移しで泉の水飲んだりもさせず、熱病時の“ベッドにネズミ千匹”みたいな面倒臭い「汚」シーンも省略してて、力持ち殺人スペクタクルもなく、、、、、、「美しい人を美しい風景の中で無難に撮れば、褒めてもらえる」って信じ込んだステファヌ・ブリゼたちが好きなようにこれを作った。