社会のダストダス

デイアンドナイトの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

デイアンドナイト(2019年製作の映画)
4.4
ひとつ前に書いた『ボーダーライン』とも道徳的なテーマが似ている、こちらは再鑑賞になりますが。作中の象徴的なセリフで“善と悪はどこからやってくるのか、自分は今どちらにいるのか”

父親が自殺したことにより実家に帰ってきた明石(阿部進之介)。父は大手自動車会社の不正を告発したことで死に追い込まれ、残した負債により家族も崩壊寸前になっていた。そんな明石の父に生前世話になったという児童養護施設のオーナー北村(安藤政信)が手を差し伸べる。施設を存続させるために犯罪も辞さない北村に明石は徐々に影響を受けていく。

これが5年前の公開ということで、それ以降の藤井道人監督の勢いの凄さを感じる。今のところ藤井監督の作品で観ているのは本作以降のものになるけど、その中ではかなり好きなほう。重いテーマ、シリアスな温度を保ちつつ割とエンタメしているのが全体的な傾向かな。

本作は、藤井監督×清原果耶様の第1弾、もうすぐ第3弾が公開になる。藤井作品は映像が好きなので、推しの女優が出ているとそれだけでテンション上がる。前髪ぱっつん時代の果耶様の余りある可愛さ、役名で主題歌まで歌い、本作の果耶様の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。すき。

主演は阿部進之介さんと安藤政信さん、こちらの二人はあまり観たことない。阿部進之介さんは最近観た『カムイのうた』にも出ていたようだが、うーんちょっと分からない、アイヌの人の役だったかな。

藤井作品常連の山中崇さんと田中哲司さんも、清々しいくらいの憎まれ役で登場。田中哲司さんなんて本作と『新聞記者』のイメージ強すぎて、『余命10年』に出るとき絶対ヤブ医者の役だと思って最初心配だった。

昼と夜、孤児院での子供たちと遊んでいるシーンと夜に半グレたちを追いかけているシーンが交互に切り替わりながらつながる場面切り替えとか最高にイケてた、絵面を考えるとちょっと笑えるシーンでもある。

善悪の境界に踏みとどまる明石が北村の秘密を知った後や、父の仇である三宅と対峙した時に感じた復讐や使命感によって支えられたアイデンティティの崩壊、阿部進之介さんの表情の演技が凄い。

非常に重くて暗いし、救いもあるのかないのか微妙なところだけど、清原果那様はマジで天使である。そんな果耶様のラストカットでしんみりしつつ、美しいお声でエンディングテーマまで歌うので、どんなテンションでいればいいのか分からなくなる。