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スターリンの葬送狂騒曲のsomaddesignのレビュー・感想・評価

スターリンの葬送狂騒曲(2017年製作の映画)
5.0
笑いと恐怖が裏表。


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1953年ソ連。絶対的独裁者スターリンが急死した。厳かな国葬の準備が進む一方、その裏では側近たちが熾烈な跡目争いを繰り広げる。独裁者スターリンの死によって巻き起こった政権内部の争いを辛辣かつコミカルに描き、ロシアを始めベラルーシ、カザフスタン、キルギスetc各国で上映禁止となって話題を集めたブラックコメディ。

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ロシア系の名前覚えるの大変問題。
〜コフ多すぎるっちゅーねん。

冒頭のオーケストラのラジオ生中継シーンからして秀逸で、あのシークエンスだけで当時のスターリンの影響力や、粛清と隣合わせの独裁恐怖政治っぷりが伺える。

アーマッド・イヌアッチ監督作は初体験だけど、イギリス人らしい皮肉に満ちたトラジコメディの名手らしく、権威主義に膝カックンかますような冷めた視点とスノッブな笑いが面白い。

実質的主人公のフルシチョフは序盤こそ口八丁のお調子者に見えるのに、徐々に奸知にたけた戦略家の一面が除き見えてくる。跡目争いに参加してる人達全員が国民の生活や苦しみに無頓着で、自分の権力と保身に汲々としてる様を滑稽に描いてて、往年のモンティ・パイソンみたい。
クスクスと笑ったあと、これって現代とそう変わってないんじゃと思えて怖くなる。全く同じシーンなのに、二度違う味わいを持つような。

1億7000万人の独裁主義国家のトップ達が小学生レベルの下ネタでウヒウヒ笑ってる様だったり、同じN
で物凄い残酷な話をして笑ってたり。スターリンのバカ息子はアル中な上に、ホッケー代表チームを飛行機事故で全員死亡させる大失態。責任追求を怖れて急造メンバーで代表チームを取り繕う始末(スターリンにはバレなかったとか)
劇中起きること・話ししてるコトがイチイチ馬鹿ゞしくて笑ってしまうんだけど、調べたらホントのことだったりして笑ってる場合じゃない。独裁恐怖政治国家の狂いっぷり背筋が凍る。


独裁国家を面白可笑しく描く一方で、全体主義や権威主義の恐怖も描いているような。
排外主義が世界中で勢いを増し、自国ファーストを説く政権や政治が支持される昨今だから出来た映画に思えた。民主主義の黄昏を予感させる、暗い未来の予感が苦味となって後から効いてくる傑作トラジコメディ。


68本目
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