KHinoji

バッド・ジーニアス 危険な天才たちのKHinojiのレビュー・感想・評価

4.0
Filmarksの好評価が多いので気になっていたのですが、やっと見ることができました。結果、見て大正解の一作でした!

なので、映画情報はほとんど知らず、もっと子供の天才いたずらアメリカ映画くらいのつもりで見にいったら、いきなり言葉は英語じゃないし…タイ映画だったのですね。
この映画のジャンルは、青春ラブコメ・・・ではなくて犯罪青春ドラマかな?

主人公の女子高生は、裕福ではない家庭に育っていて、勉強が出来ることを武器に人生をのし上がっていこうとする物語。母はいなく、父親はマジメで勤勉。父を尊敬はしているが、社会的に恵まれているとは言えず、父の努力に対して社会が十分な報酬を与えているとは思っていない、世の中の不公平に不満を感じている子供である。学校だって、実質強制的な寄付金と言う名前のワイロを要求して金儲けをしているくせに、等。
そこで学生の彼女が始めたビジネスが、カンニングである。金持ちだが頭の悪い同級生達にお金を貰う代わりに試験で答えを教えるというビジネス、バッド・ジーニアスだね。

というわけで、この映画の見所は、カンニングという不正行為を、いかにバレないように遂行していくかという犯罪のアイデアにあります。試験問題を解けるのは当たり前、残った試験時間で、その答えを他人にバレないようにどう伝えるのか?
試験のレベルもどんどんと上がっていき、最後は米国の大学へいくための世界規模の試験になります。終盤の試験のシーンは予定外のアクシデントが次から次に発生し、果たして成功するのか失敗してしまうのか、見事な演出になっています。

カンニングものといえば、昔のマンガで聖日出夫さんの「試験あらし」を思い出してしまいます。もう内容はほとんど忘れていますが、真面目に試験勉強する以上の努力を、カンニング技術の追求につぎ込むわけです。同じ努力するなら不正行為ではなくて真面目に勉強すればいいのに…というわけで、この手の物語の本質的なテーマは、「なぜ不正行為であるカンニングという方法を選ぶのか?」というところに集約されます。

この映画では、世の中の不公平に対する子供の納得が出来ない反抗心が、そこにはあるわけです。社会が不正や不平等を許可しているのなら、自分も不正で立ち向かってもいいじゃないか、というのが内心でしょう。
しかしながら不正行為は所詮は不正…

そして、途中からもう一人の天才高校生を登場させて(やはり家庭は貧乏ではあるが、男の子で真面目な性格)、彼と主人公の彼女との対比でストーリーが展開していきます。最初は勉強のライバル、その関係がカンニングビジネスを通じて最後にはどう変っていくのか、がこの映画の本当のテーマになっています。

この部分をちゃんと考えているからこそ、この映画はただの娯楽映画以上の好評価を得ているのだと思います。
結末に、涙してしまうかもしれません。

お楽しみください。

(2018/10 公開時映画館にて、字幕版)
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