凄まじい舞台だった。
ライブビューイングでも感じる作品そのものの難しさと、実際に譜面を見て感じる難解さ。
誰かが落ちたら戻ってこれない、プロフェッショナルな人たちによるプロフェッショナルな舞台だった。
落ちても作曲家、指揮者、演奏者くらいしかわからないだろうな。
現代音楽の魅力に取り憑かれ始めたのも、この作品を観てからだった。
作品の内容そのものも面白かった！
閉鎖された空間から逃げ出せない人たちのお話。
映画もあるそうなのでいずれ観たい。
ホラー、サスペンス要素もあり。
演奏してみたくなる興味深い旋律が沢山出てくる。
ちょうどゼミで勉強してたオンド・マルトノがオケに必要とされる作品だったからタイミングも良かった。
音色超良かった！あの聴く人を不安にさせる音色は唯一無二。
21世紀の現代音楽、とても面白い。

歌手の声帯が心配になるくらい冒頭からハイノートの嵐。これは人間に歌わせちゃいかんだろ、と思ったけど幕間インタビュー見る限り歌手の人たちもアデスに「無理無理無理無理」って懇願したんだって。

オペラ知識が《ルル》くらいで止まってるから正しく鑑賞できた気はしないけど、すごく良かったと思う。
登場人物は減っていたけど、原作の印象をさらに補強してくれているような感じ。姉弟が近親相姦的に処理されているのには笑ってしまった(カウンターテナーの人にブラボー)。
人々はあけすけにいかがわしく(聞こえるように言う悪口とか見える位置でする不貞は舞台で見た方が面白いね)、肉料理はひっくり返され、ヤギや熊も出てきたし、チェロもばきばき割ってたし、見たいものは見れたという感じ。演出も題材からいわゆる第4の壁をごりごり使ってくる感じかと思いきやそういう感じではなく、嫌味ったらしくなくて好印象。でも全体的に原作より怖かった。「ここからは出られません」。

周到で邪悪な演出
羊、熊、鐘
飲食、セックス、排泄、死
音が先に提示されてその正体があとで視覚的に理解される（ブランクーシで水脈を掘り当てるマッチョ、太鼓、幕が上がる前の鐘と終結部の鐘）から予感めいたものへの感受性が研ぎ澄まされる