Oto

スパイダーマン:ファー・フロム・ホームのOtoのレビュー・感想・評価

4.0
スタークの魂を引き継ぐSFヒーロー映画。
スマートグラス、衛星、ホログラムとワクワクする技術が続くし、特にドローンのプロジェクションで幻影を見せるってアイデアはかなり新しいように思う(映画史上であっただろうか、仮にあったとしてもこのクオリティでは描けていないと思うけど...)。統合失調症とか認知症とか主観の幻影として描かれることは多いにしても、大衆の視点がハックされるという描き方はかなり新鮮。インセプションやパブリカは近いけど夢だし。

全体のテーマも「嘘」や「粉飾」で、上記の表現とも合致しているし、ミッドポイントでちょうどミステリオの正体が明かされるのも美しい構成。エンドロール後のおまけまで一貫している。
戦争が始まったことやDeepFakeなどの発達によって、SNS上に流れている動画がリアルかどうか見抜くことが難しくなっていくことが予想されるので、この映画も御伽噺ではない。
「優しすぎて人を信じすぎる主人公vs.すべてを思うがままに見せられる虚飾のヴィラン」ってすごく面白いアイデアでさすが。

冒頭の I Will Always Love Youでわかるように恋の物語。行きの飛行機で親友が付き合ってしまったりチェコ行きがすぐに決まったり「2コマ漫画」みたいなハリウッドらしいギャグが冴えてる。
ゼンデイヤ演じるMJも現代的にアップデートされているというか、どこか日本のサブカルヒロインを感じさせるような素直じゃない可愛さみたいなものが描かれているのがいいなと思った。

水の怪物だからヴェネツィアにしちゃおう、土の怪物だからメキシコにしちゃおう、というバカみたいなお金の掛け方できるのっていまMCUくらいじゃないかなと思う。エンドゲームで燃え尽きて止まっているけど、この先も見てみようかなという気持ちが少しだけ湧いてきた。ノーウェイホームもやっとみられる。

気になったのは、投影技術が大衆にバレてしまってからも、パーカーの友人2人を個人的に倒そうとした理由がよくわからなくて、もはや自分の正体は公になってしまったのでは?と感じさせるような描写に見えた。
最後にパーカーに罪をなすりつけたオチからしてもバレずに貫き通したということになっているということはわかったけれど、ギレンホールのいた場所が周りから筒抜けだし大衆のリアクションもそう感じさせた。ノイズを感じさせない表現づくりって本当に難しい。
Oto

Oto