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モリのいる場所のKKMXのレビュー・感想・評価

モリのいる場所(2018年製作の映画)
4.0
結構ケラケラ笑える楽しい作品。同時に、主人公・モリじいさんの豊かな世界の見え方を体験できる、贅沢な逸品でした。

本作は山崎努アイドル映画ですね。主人公のモリおじいちゃんがとにかくキュート!ジッと虫とかメダカとかを眺める姿とか、杖を2本つきながらも意外とスピーディな身のこなしとか、なぜか小学生と目があって逃げるとか、絵描き部屋に行くのを嫌がるとか、いちいちカワユイです。

勲章を固辞した理由が「人がいっぱい来ちゃう」でしたが、モリの家にはすでにいっぱい来てますよ!それがまた賑やかで楽しそう。だからモリも本気で嫌がってはいないような印象。
勲章を受けたら、きっと心根の卑しい人たちがいっぱい来ちゃうので、それが嫌なんでしょうね。

言うまでもないですが、樹木希林がスゲーですね。『日日是好日』の感想文では喪失感にしんみりしたのですが、本作で感じたことはとにかく顔がスゲーってことでした。本当にスゲー顔です。片目が義眼だからか、結構激しい斜視で、それが特別なトボけた凄みを生み出しているように感じました。
(追記・義眼は誤情報でした、スミマセン!)
役柄も食えないがぬくもりあるバァさんで、樹木希林そのものみたいな印象でした。

個人的に一番ハッとした場面は、モリが現場監督の息子の絵を下手と評し、「それがいい、上手いと先が見える」的なことを述べたシーンです。これは妙に腑に落ちました。我々は下手だからこそ先が見えず、だからこそ新たなる出会いに胸を躍らせるのでしょう。
モリはまだ生きたい、生きるのが好きなんだと言っています。これからも新しい出会いが待っているからウキウキするのでしょう。アリは二番目の足から歩き出すことに気付いたモリですが、また新たなる発見があるかもしれません。

モリにとっては庭が永遠のワンダーランドなのだと思います。常に、新しい出会いと発見に満ちている。
本作は荒唐無稽な側面もあり、モリが宇宙に誘われる(?)シーンがありましたが、その時の彼の決断はとても理にかなっていました。ワンダーランドに住んでいるモリにとって、まさにここが宇宙そのものですからね。
それを妻がしっかりと理解しているのも、本当にあたたかでした。


お手伝いさん(?)のキャラがいい味出してました。娘ではないっぽいし、ナゾでいいです。
そしてなにより、彼女が序盤で口ずさむのは、戦後最高のポップアイコンにして老いてなお盛んな反骨のロックンローラー
(あんなライブキャンセルの仕方は世界でも全盛期のW. アクセル・ローズくらいしかできないであろう!)
ジュリーことSAWADAの『危険なふたり』!寺内貫太郎オマージュでしょうがSAWADAを崇める者としてはたいへん有難いシーンでありました。
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