垣根

詩人の恋の垣根のネタバレレビュー・内容・結末

詩人の恋(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

なんてままならないのだろう。
終始もどかしくてたまらなかった。
恋情と愛情と同情の境目はどこにあるのだろうか。
全てを捨ててでも好きな人を助けたい、守りたいと思うテッキの心は紛れもなく愛だったと私には思えた。
そして全てが欲しいと自分の欲求に忠実に真っ直ぐテッキにぶつかっていく妻のガンスンが眩しくもあった。
対してセユンのテッキに対する想いがあまりはっきり描かれていないのもよかった、他人の感情なんてわからないものだから。 
けれどセユンがどれだけテッキに救われ、うら若き青年のその人生において彼が特別な人になったかなんてのは痛いくらい伝わってきた。それはテッキも然りなわけで。
そんな彼らの出会いは様々な苦しみや葛藤を経て、結局はそれぞれ別々の道を歩むことになるのだけれどそれはお互いにとって決して悪い未来ではない。
愛は人を成長させるなんていうけれど、まさにそんな感じとでもいうか…自己抑圧的で未熟だったテッキがセユンの母親に怒ったりセユンにプロポーズ(違う)するところなんて、やるやん…!(何様)と感動してしまったし愛を知って人間的に成熟し、スランプから脱してより深みのある詩を編めるようになったなんてある意味皮肉な話でもある。
でも人生とはそういうものなのだろう。
生涯を共にすることはおろか、たとえ一緒にいられなくても、甘いドーナツや落ちてる黒いビニール袋、布団の中の臭いものを通してふたりはあの一瞬の特別な日々と、愛したひとのことを思い出すのだろう。
そしてその愛の悲しみは希望となってテッキの詩の中で永遠に生き続けるのだ。
垣根

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