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忘れじの面影のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

忘れじの面影(1948年製作の映画)
3.6
美しいタイトルと美男美女の主演には似つかわしくない、なかなかホラーな話でした。メロドラマや純愛ともとらえられるけど、アイドル的ピアニストに憧れた少女がストーカーと化し、そのピアニストがグルーピーを食い物にする悲恋というのか、ピアニストにバチが当たって悲喜劇になるというのか。最後のオチに溜飲が下がる思いになります。

ピアニストは容姿端麗、才能に恵まれ、次々と女をたぶらかす口のうまさで、女性が絶えることがない、それを隣家の少女は知っていたのに、この恋しかない、と刷り込まれてしまった、盲目の恋。

ピアニストにとって恋が人生、人生が恋。誰も記憶に残らず未練もないので、つねに新鮮な恋に向かう。

一途を超えた少女のストーカー度が鬼気迫る。あの歌を思い出しました。偶然を装い帰り道に待ち伏せ。思わせ振りとミステリアスな雰囲気をまとい、彼の目にいつか止まるように、彼の好みの女性を演じる。少女が妙齢な年になっても恋にドキドキしてウキウキしている様子が可愛いかったです。

かたや記憶がなくなるタイプ、かたやその人しか見えなくなるタイプ。

ピアニストは白髪混じりになっても天然たらしで、口からでまかせの甘い言葉を本気で語り、少女は結婚したのにまだ追っかけしている。

アイドルはどんなに落ちても、支えるファンがいて、アイドルとしてファンの夢の中に永遠に生きるんですね。

少女はピアニストから受けた酷い仕打ちを決して咎めず、何度会っても忘れられていた自分が何者かについて、長い手紙を書きます。

作品の構成がおもしろく、最後に知らず知らずして、彼女の愛が怨念に変わっていて、これはホラーかもと、すっきりしました。

📖原作は『見知らぬ女からの手紙』で、多数の国で映画化されています。フィンランド、メキシコ、エジプト、フランス、中国、モンゴル等々。

*同じタイトルの1936年のミュージカル作品があり、間違えてそちらにレビュー上げている方、多数いました💦
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