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マスカレード・ホテルのOtoのレビュー・感想・評価

マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)
3.5
かなり『HERO』な設定。今作は潜入捜査だけど、キムタクは定番のニューカマー。

調子乗って周りを馬鹿にする「最悪の出会い」から始まって、お互いが違う立場で協力して、リスペクトし合うゴールに向かうというバディドラマを作りやすいから、この型は汎用性が高い。

ガリレオの福山、のだめの玉木宏、花男の松潤…。この「俺様系」の系譜って今だと誰なんだろう。当時ほどの「国民的俳優」っていまはいないと思うし、いまだにキムタクが筆頭にいるような気がする。「王子様俳優」は増えてるけど、男臭い俺様はニーズが減ってるんだろうか。

「豪華キャスト大集合」をやりすぎて、小噺の羅列のようになってしまった印象もある(不倫現場、教育実習生…)けど、それによって二時間超を飽きさせない作りが成立してるので、ほぼ数人で完結させる自主界隈に慣れていると、参考にしづらいことが多い。一瞬しか出てこないキャストに、顔のわかる著名人を使っている理由とか考えてしまう。

ホワイトボードの出てくる会議パートがわかりやすく説明シーンになっていたのも引っかかる。話が前に進む瞬間も名探偵コナンくらいわかりやすくて、長澤まさみが関係のない雑談を話す時に、わかりやすく主人公がぴかーん!の顔をしている。冒頭の出会いのカットから歌舞伎みたいにキメキメのスローショットで笑ってしまう。

とはいえ、気をつけて行ってらっしゃいませ、の天丼とかエモーショナルな描写もありつつ、序盤で振りを入れておきつつ二段階で裏切る犯人像とか、誰がみても楽しめるザ娯楽映画でよかった。

ホテルという場所の高揚感は、ある種、各々が仮面を被っているが故であって、そういえば世界初の群像劇映画も『グランドホテル』だった。全く顔の知らない人同士が長い間同じ空間に居合わせることってなかなかないし、列車と同様、ミステリーにすごく向いている。

トリックがいまだに緯度経度の暗号だったり女装だったり、アガサの時代、ヒッチコックの時代から進化していないという哀しさを覚えなくもないけど、それは娯楽映画や東野圭吾に求めるものではないか。謎解きブームがあったり、ミステリーっていまだに根強い。

勝地涼の元夫婦共演、さんまさんカメオ、HEROコンビ、コンフィデンスマンコンビ…これだけ揃えて絶対に外さないものにはなっているものの、どこかで不確実な挑戦をして欲しかったな。シリーズ企画にしても続編の要素を繋がりも考えずに入れるのも美しくない。
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