みーちゃん

夜の大捜査線のみーちゃんのレビュー・感想・評価

夜の大捜査線(1967年製作の映画)
5.0
名作だからという理由で若い頃に見たが、そんなに感動した覚えがない。たぶんストーリーしか見ていなかったのだろう。改めて観たら、ドラマの切り取り方、描き方に自分でも驚くほど感動した。映像作品として渾身のバランスなのに、全然ドヤ顔じゃないのが良い。名作といわれる理由を心から理解することができた。

昔はシドニー・ポワチエだけに注目し、ギレスピー署長は嫌な奴にしか見えなかった。ところが彼の良さに初めて気づいた。署長の心情を追いながら観たら、景色が変わり、全く違う楽しさを味わうことができた。

無駄のないシーンを組み立てるシークエンスの作り方にも感銘を受ける。特に、映像が印象的なのは冒頭の10分間。列車のライトにフォーカスイン!からのレイ・チャールズ!からの駅に降り立つティッブスの足元だけのショット!(駅舎を住処にする犬が一緒に映り込むのが凄く良い)からの、サム巡査に発見される瞬間!この繋ぎ方に感嘆。

次に、セリフが印象的なのは署長の自宅に招かれるシークエンス。二人の距離は少しずつ近づきながらも簡単に行くはずはなく、一言一句に隙がない。少しでも崩れた途端に陳腐になるから、どう場面転換するの?と固唾を飲んで見守ったら、まさかこうくるとは。

最後に、貴重な女性の登場人物であるリー・グラントの鮮烈さ(刑事コロンボの"死者の身代金"のサイコパス弁護士役も良かったなー)。気丈な振る舞いで、「彼女も差別主義者なのか?」と一瞬だけ観客をミスリードする演出が憎い。

※アカデミー賞では編集賞も受賞したと知って納得。編集:ハル・アシュビー、59歳没。監督作は"ハロルドとモード"など