回想シーンでご飯3杯いける

THE UPSIDE 最強のふたり/人生の動かし方の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.5
これもamazonプライム・オリジナル作品。フランス映画「最強のふたり」のハリウッド・リメイクである。スラム街出身で無職の黒人デルが、四肢麻痺の大富豪フィリップの介護人として働くという話。

基本的にはフランス版に忠実な作りなのだが、冒頭で印象的に挿入されていたアース・ウィンド・アンド・ファイアー(EW & F)の音楽が無くなり、代わりにアレサ・フランクリンの音楽が各所で使われている。この違いが、そのままオリジナルとリメイクの違いになっていると思う。

EW & Fはアメリカのグループながら、アフリカンやジャズ、ディスコのテイストをミックスした雑多なポップサウンド(ある意味コミカルでさえある)が魅力。これに対してアレサ・フランクリンは'60年代の公民権運動でアイコン的存在だったシンガーであり、どうしてもシリアスな側面が強調される。そもそもフランスに住む黒人と、アメリカに住む黒人は、元をたどると歴史的な背景に違いがあるはずで、このハリウッド版ではシリアスなテイストを打ち出す必然があったのかもしれない。

(フィリップが髭を剃る際に、ヒトラーに似ていると茶化されるシーンの台詞が「チャップリンみたい」に変更されている。これもコメディ→シリアスを象徴しているかも)

フランス版を観ていない人であれば、このリメイクも十分に楽しめる作品だと思うが、僕はフランス版の軽やかさと明るさの方が好きだ。