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サイコキネシス 念力のRenのレビュー・感想・評価

サイコキネシス 念力(2017年製作の映画)
3.0
『いぬやしき』じゃん。おもしろB級SF映画に終始しており、特に考えるところもない直球エンターテイメントになっていたところがヨン・サンホらしい。101分と短くまとめ上げた点は英断だった。

ヨン・サンホは元々アニメ畑出身の人なので、やはりこういうとことんフィクショナルな作品を撮ってこそだし、物が浮いたり人を投げ飛ばしたり一枚一枚の決めどころがとてもアニメっぽいなあと感じたのが第一印象。
『新感染 ~』は、ハリウッドが牽引していたようなゾンビものを韓国がしっかり予算をかけて作り上げた堂々たるエンタメ大作として歴史に残ったが、今作はそういう文脈では特に語れないかな。閉塞感のある町の雰囲気は『ソウル・ステーション パンデミック』っぽく、どんと開けたエンタメというよりかはミニマルSFコメディアクションとして一定の面白さを満たした映画だと思った。

父親が超能力を使う姿が微塵もスタイリッシュではないのが意外と見たことなくて面白い。リュ・スンリョンの顔芸で成り立っている映画だと思う。テイストはチャウ・シンチー作品っぽいかもしれない。ラストシークエンスのあまりのグリーンバック感は観客のツッコミ待ちか。

韓国映画には、絶対と言って差し支えないほど権力勾配への批判が含まれていると感じますが、今作も例に漏れずだった。権力側の人間に支配される者たちの反逆。
中盤までラスボスかと思われた人物がバチバチに中間管理職のムーブを決めていたのも面白い。板挟みは苦しいよね。
終盤戦のSATの一人みたいな人間が窮地に追い詰められたときに「ただのバイトだと思って....すみません、弟のために....」みたいなこと言い出したのが個人的ハイライト。生存のために思想や倫理観は一旦置き去りにする、という思考停止の嫌さが全ての人間に通底している。その中心でどう考えたって人間ではない者の最たる男が大暴れするから、ヒーロー映画としてのカタルシスがある。

『新聞記者』にも主演したシム・ウンギョン、『サニー ~』の可愛らしさを残しながらシュッとした佇まいになっていて素敵。今後の出演作も気になる。
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