あんがすざろっく

千と千尋の神隠しのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
2.5
公開時に劇場で鑑賞しました。
今一度見返そうと思い、DVDをレンタル。

ちょっと辛辣に書いてますので、ご容赦下さい。



正直な話、劇場で観た時に観終わって感じたことは
「こんなはずじゃないんだけどなぁ」ということと、
「本当に、宮崎監督が作った作品なのかなぁ」
という疑問。
それぐらい、違和感満載で劇場を出た覚えがあります。
それ以来、一度も見ていませんでした。


「もののけ姫」から4年、待ちに待った宮崎アニメ、贔屓目に見ても、僕には違和感が残りました。
カタルシスが全くない。
これがないと、映画を観たという醍醐味が感じられないし、印象に残らないんです。
宮崎監督は、「もののけ姫」で燃え尽きてしまったんだ、そう思わざるを得ませんでした。


見返して見て、感じたことを書いていきます。




キャラクターに関して。

千尋は主人公なので、その主体のなさと言いますか、まぁこういう子なんだなぁというのは分かりますし、物語上、一応納得はしました。

が、しかし。
ハクなんかは、確かに千尋にとって、とても大切な存在であった訳ですけど、僕は見返すまで、ハクの設定をまるで忘れていたんです。
いや、見返しても、あっ、そうだった‼︎と合点がいく程でもなく、完全に覚えてませんでした。
こんなに覚えていないもんかな、と自分でも驚くくらいに。


湯婆婆に対する賦に落ちないシーン。
お腐れ様が、実は名のある神様だったと分かった後。
それを導いた千尋を、抱きしめて褒めますが…。
これ、必要でしたかね?

その後の湯婆婆の設定上、全然効果を出してません。
勿論、金に目がなくて、子供には甘い、湯婆婆の性格の表裏の激しさは伝わります。
それでも、このシーンが後々に響いてこない。
むしろ邪魔なくらいです。
もしかして、ラピュタのドーラのオマージュのようなことをやりたかったんでしょうか…。
これをやるなら、それこそ銭婆婆にやらせた方が、よっぽど説得力がありました。

カオナシは、う〜ん。
余計に分からない(笑)。
まぁ多分、行き場を失った魂というか、神様の存在を描きたかったんでしょうが、千尋と一緒に旅をする意味も分からないし、優しくされたから千尋にも優しい、というのは余りにも短絡的だと思ったし。

釜爺とリン。
千尋の味方だったことは思い出しました。
鎌爺がいきなり口にする「愛だな」って。
えっ、その一言でまとめてしまうんですか?
なんだか、そのタイミングで出る台詞にしては、随分浮いてしまっていたなぁ。


設定に関して。
見終わっても、何かがしっくりこないんですよ。

どうしてなんだろうなぁ。
ファンタジーと現実のアンバランスさだろうか。


今までのジブリ映画って、舞台となる場所がとても魅力的だったんですよね。

魔女宅のキキ、紅の豚のポルコと、主人公にファンタジー色が強いんですけど、現実にありそうな街を舞台にしているから、ファンタジーと現実の境目が取り払われて、現実の延長線のように感じられる。
ロケハンと美術の素晴らしさが圧倒的な訳です。
耳をすませばなんか、聖地巡礼したくらいです。

もののけ姫のシシ神の森、トトロの塚森と、一気に見る人を引きづりこむ奥深さと懐かしさ、神聖さがありました。

物語の中にすんなりと入り込むことができる。

油屋のスケール自体は大きくて、迫力がありますが、全然魅力を感じないし、千尋にとって、ここが大事な場所になる、という気が起きません。

現実にはありそうな建物ですけど(実際モデルになった温泉街にも行きましたが)、だからといって、訪れてイマジネーションが刺激されることはないし、あ〜これが千と千尋の舞台かぁ、と感慨深くなることはありませんでした。
思い入れの違いかも知れませんが…。

千尋が働くことを通して、成長する話かと思えば、決してそうとも言い切れず、行きつ戻りつ。
気持ちが落ち着く場所がないんです。


見返して改めて思ったのは、恐ろしいくらいに、すべてがぽやーんとしていたこと。
物語の起承転結、キャラクターに至るまで、全てです。
覚えていたのは、最後の最後、全く変わらない千尋の表情と眼力。
この子、本当になにか変わったのかなぁ、と疑いたくなる程。


結論。
全てのキャラクターと設定に奥行きがない。



今回見返したのは、ナウシカと一緒にDVDを借りたからです。
が、見返しても、やはりこれは頂けない。
この先何度見返しても、印象は変わらない気がします。

思い入れの違いと前述しましたが、もしかしたら全てはこれなのかも知れません。
「もののけ姫」の後にかける期待が大きすぎたこと。
あの熱量の後では、僕にはジブリの新作が霞んで見えてしまったんです。

とは言え、ポニョや思い出のマーニーは好きでしたけどね。
「ハウルの動く城」、見返すのに躊躇するなぁ。
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