Masato

鋼鉄の雨のMasatoのレビュー・感想・評価

鋼鉄の雨(2017年製作の映画)
4.6

北朝鮮でクーデターが発生。その後、北朝鮮は全世界へ宣戦布告。最高指導者と共に命かながら南へと逃げてきたチョルウは、韓国で出会った外交官と共に、戦争を阻止しようとする…

Netflixオリジナル作品

韓国映画ファンは絶対に見ておくべき作品。現在の韓国における政治的問題をかなり詰め込んだ傑作社会派アクション・スリラー・ドラマ。

Webコミックの映画化らしいが、もうこれは現実なのでは?と思ってしまうほどの時事的な内容。展開がリアルすぎて、これからの事態を予見しているよう。かなり社会派でシリアスな内容なのだが、韓国映画らしく、笑いと人情深さを決して忘れない感動のドラマになっていた。

「社会派」という大きな纏まりを扱うことで全体的に無機質になりがちなものを、南北のバディ要素を取り入れることで、よりドラマチックにエンタメとしても富んでいる作品になっていた。これは、「タクシー運転手」を見たときと同じ、大局的な事象を描きながらも、その事象に対する各個人の感情も緻密に描き出す。一挙両得の素晴らしい映画構成だった。

序盤のクーデターが起きたところは情報が錯綜した感じがより出ていて、パニック映画ぽくて面白かった。
アクションに関しては、ヤクザものではないので手斧ではなく、骨太なガンアクションを見れた。やはり人民軍は旧日本軍ばりのエゲツなさを感じさせる攻撃をしてくる。チョン・ウソンのアクションは最高だ。

意見が対となるキャラクターを設置させ、物語の途中で議論を生ませようとするところも、社会派らしくあり、非常に巧いところだ。特に、現大統領と次期大統領の意見の衝突は核心をつきつつ、シンプルでかなり興味深い。

こういった、南北の軋轢を取り扱った映画を沢山見ていると、南北問題というものは双方の人間にとっていかにそこはかとない苦しみを与え続けているかが徐々に理解してくる。それぞれの国によってこの問題に対する感触は変容するであろうが、韓国の映画作家たちはこの問題についてどういった見解を示すのであろうか。わたしが今まで見てきた中では、全ての映画が南北の平和的融和を求めている(まあ北朝鮮を攻撃するという内容にしたらかなり危険だが)。だが、ニュースを見てきても、平和的融和がみんなの意見とは言い難い。でも一つ言えることは、前述した通り1番苦しんでいるのは双方の国民なのである。
「分断国家の国民は、分断そのものより分断を政治的利権に利用する者たちによって苦しめられている」
という、劇中のセリフに全てが込められている。この問題がいつしか平和的に解決されることを韓国からしても我々日本人からしても願っている。

あと、とあるサイトを見て感じたことで、中国人の男が「貧乏人を外国人扱いする」というセリフにも意味があるとわかった。「哀しき獣」や「犯罪都市」、いろんな映画で朝鮮族が悪役として出てくることがあるが、彼らも一応同族であり、また悪い人間だけでなく、映画を見るうちにステレオタイプが固定されてしまっている。こうしたステレオタイプを私たちは壊して注意して見なければならないと感じた。


2018.06.23 2回目 ヤーチーシネマズ
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