Masato

15時17分、パリ行きのMasatoのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.6

クリントイーストウッド最新作

86歳になっても衰えを見せないクリントイーストウッドは、再び実在の英雄を描く。
前作の「ハドソン川の奇跡」も奇跡的(奇跡とは言いたくはないが)な不時着をして乗客の命を救った英雄を主人公にしていた。
イーストウッド監督作品の中でダントツの「低評価」だが、期待値下げたおかげなのか、すごく良く感じたし、思わず涙腺を刺激された。

実際に命を救った3人を主人公にキャスティング。それにとどまらず、列車にいた乗客も全員その場にいた人という心意気。もちろんテロリストは除いて。
「どうせなら、本人にやらせりゃいいじゃん」といったノリなのか?
当然本人たちは演技経験素人なので、ドラマティックな演技は見せずに淡々と素朴に演じていく。この映画自体がドキュメンタリーとドラマの間のような作品なので、その素朴な演技がよりリアリティがあって逆によかったと思う。

まるで、列車に乗る運命に導かれるようにストーリーが進んでいくのが面白い。見る人はラストのテロリストとの遭遇を知っているので、それまでが退屈になりがちだが、あえてそれに結びつくようなセリフやシーンを合間に描写していくことで、運命を感じさせられるようにしてくれるのは巧い。
特に「大きな目的のために、人生が導かれているような気がする」といったセリフはなんとも言えない運命を感じてしまう。

肝心のラストは、とてつもないスリル感。それに、これ本当にあったんだと驚愕する「奇跡」が神秘的だった。

彼らは元々英雄ではない。3人は私たちと同じ、不条理なこともありながら紆余屈折して生きてきた人たち。なにより、我らと同じ一般人だ。我々も一瞬の決断と一瞬の勇気で英雄となれる。だが、それが難しい。
スペンサー・ストーンとアレク・スカラトスは軍人として訓練を受けていたので、男一人を押さえつけられる力はあったと思う。しかし、それと勇気は別だ。
突然やってくる事態に、私たちは彼らのように対処することができるのか?自分の身を呈して対処することができるのか?そんなことを考えさせられる映画だ。

ただ、かなり実話に忠実が故に、イーストウッド監督の色が抑えられてしまっていると感じた。ある意味、ドキュテンタリーっぽさが仇となったか。ア


客観的評価 35点
主観的評価 38点

73点
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