ぬーたん

15時17分、パリ行きのぬーたんのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
4.1
実話を実在の当事者が演じた作品。
こんな映画がかつてあっただろうか?
御年87歳のクリント・イーストウッド監督、年を取っても攻めまくり。
タリス銃乱射事件で犯人に果敢に立ち向かい、乗客500人の命を守った3人のアメリカ人の若者が主役。
当事者なのに、まるで俳優のようにカッコいい容姿と、素人とは思えぬ演技にセリフ。この3人ならイケると思った監督の気持ちが理解出来る。
『The 15:17 to Paris』というタイトルだけど、そのパリ行きの列車に乗るのはこの映画が始まってそろそろ終わりという1時間程経ってから!
94分の映画、残りは30分⁈
つまり、この事件自体は実にあっさりと描かれているのだ。
犯人も他の乗客も大して描かれない。
あくまでこの3人が主役。
それまでの1時間、この3人、特にスペンサーの人生を描いている。
子供時代の3人の出会いと戦争ごっこ。
3人の別れと変わらぬ友情。
スペンサーが軍隊に入るところ。
その中での訓練。
3人のヨーロッパ旅行。
他愛もない、ごく普通の若者たちの、心の葛藤や決意、失望。
ごく普通の日常と、よくある楽しい旅行を観させられる。
あれれ?いつ事件が起こるの?とイライラしてたら失望する映画かも?
私はこの3人が当事者で本当にごく普通で、何だか自然過ぎて、すっかり見入ってしまった。
リアリティーがあるから、スーっと入って行けた。
『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』と、ごく普通の人がある事件に遭遇し活躍することで注目され、ヒーローになる話が続いている。
アメリカ中が、そしてイーストウッド監督が好きな話なんだろう。
またかとこちらも身構えるが、いかんせん、この監督のあっさりとした切り口にグッと来てしまい、毎回泣けてしまう。
今作もあれれ、気が付けば、涙がホロリだ。
ヨーロッパ旅行も、観光客の良く行く所に行き、同じことをし(トレビの泉とかで)感動し、はしゃぎ、何だか可愛い。
素直に、私も行きたいなあとか思った。この後の事件の前に穏やかで楽しい時間を共有した。
柔術に救命術。誰かを助けたい気持ち。
スペンサーについて描かれたそれまでが、この事件で活きる。
しっくりと来る。繋がる。
3人の落ちこぼれの子供が遊んでいた、あの森の中で、協力して闘っていたあの頃の、そのシーンが重なる。
そして、問題児を抱え苦悩していた母たちのその気持ちになり、表彰式では、その母の顔を追う。
母は本物の女優だから上手いし綺麗だけどね。
誇らしかったろう、我が子が。
涙。涙。
ぬーたん

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