まいたけ

1987、ある闘いの真実のまいたけのレビュー・感想・評価

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)
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「タクシー運転手」のときは、ついこの間にこんな事件が起こるなんて、と思うと同時に、どこか(こんな時代にまだこんなことやってたなんて、韓国って遅れてるな)的な上から目線があったかもしれない。日本は完全な民主化を早々に達成して権利と自由を随分前に手に入れた、みたいな、漠然とした思い込みがあった。けど盲信だったかもしれないなと映画を観ながらモヤモヤと考えてた。
公式サイトにも、日本がバブル景気に沸く1987年、という記載があるけど、天安門事件もベルリンの壁の崩壊もそのさらに後だし、アラブの春はつい6年前の話だ。
日本や一部の先進国がポスト民主主義だとか言ってる今でも平等を求めて闘う人もいてはる。

朴正煕、漢江の奇跡、全斗煥、軍事クーデター、6.29宣言。
全部レビューを書くにあたって、このモヤモヤした気持ちをなんとかしないと、と思っていろいろ読んでると、ほんとに知らないことだらけ(まぁWikipediaとかですが…でも一番わかりやすいのがWikipediaだった)。
朴正煕が2017年調べの歴代大統領の好感度2位というのにも驚く。経済成長を成し遂げた朴正煕は高齢者を中心に支持を得ているのだそう。「タクシー運転手」冒頭の、ソンガンホがデモに怒ってるシーンはこういうことだったのか。

ある意味で国の恥部を映画というエンタメにして世界に発信できること。そして何よりも、それを4人に1人が観に行く土壌があること。この点は明らかに日本よりも進んでいると思う。

物事について深く考えることをやめて意識下での社会依存度を高めて恣意的に形成された総中流が築いた、戦争状態のない経済的繁栄(ちょっとパトレイバー2入っていますね…)と、抑圧からのカウンターとして闘い勝ち取った権利とその代償としての社会的混乱のどちらがいいのか? 今まではもちろん前者と思っていたけれど、うーんよく分からなくなってきた……

自分なんて知らないことだらけで、今回いろいろ知ったつもりでいるけど、全部ネットの情報だし、もしかしたら大変な思い違いをしているのかも。でもそれはそれとして、こうした機会を与えてくれたこの映画には感謝だし、これを機に近代史を勉強し直したい。同時に日本の歴史ももっと知らねばいけない。

最後に一つ。真実って言葉はきらいなんですよね。真実は、それぞれの人、立場の中にある。立場が変われば真実は変わる、と自分は思っています。事実は一つ。けど解釈次第でたくさんの真実が生まれる。真実を知る、明らかにする、というのは同時にミスリードも生みかねない危うい考えではないかと思うのです。自分はそれをスタートレックで学びました(またここにつなげる)。
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