まりぃくりすてぃ

万引き家族のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
2.0
面白そうなのは原案だけ。映画としてはやや失敗。

失敗の原因❶ 夫婦役の演技が(終盤以外)バツ。見かけと行動だけで充分「やさぐれてる」のに、わざわざ万引き家族感を強調しようとして「やさぐれた喋り方」に終始。特にリリーフランキーの巻き舌が時代劇的でノイズ。貧乏なくせにブクブクしちゃってる安藤サクラも、声の出し方がベタすぎるんだよ。爽やかさヒャッパーの美男美女が万引きしたってべつにいいわけだしさ、もっといい意味でのカオスを視覚聴覚上展開させてほしかったな。私たち観客に「個性を強調して演じてまっす」とかト書きを意識させるのは一流未満者だよ。もちろん監督が悪い。
どうせ絶対セックスするってわかってるとおりにセックス始めるんだったら、そうめんを経由するな! おかげで今後私はそうめん食べるたんびにあんたたちを思い出さなきゃいけなくなる。
後半でやっと主演者たちの喋りにこっちも慣れてきたけど、その頃には作品自体に絶望してたから、「わりと珍しいタイプの泣き演技で今さら惹きつけてくれちゃっても、ちょい遅いんだよね」と言いたくなった。まあ、大根役者たちではないってことはラストまでに証明されたけどね。要は、そこまで持ってくるまでの監督の演出能力が低い!(子役への演技づけはそこそこだったけども、子役二人の輝きのチラ見えまで大人たちのせいで消えがちだった。もったいない。。)
ばあさんは、ろんぱりアイとか気ダルっぽさが「何かキキキリンに似てるなあ。キキキリンでもないのに何でキキキリンっぽいのよ? にしてもキキキリン的だ」とずーっと思わせた。主演男優名と監督名以外に何の事前情報も期待もなしにこの映画観ただけの私だったから。……で、エンドロールのところで「キキキリン」の名を見つけて、「えっ? キキキリンだったの?」と知る。
キキキリンそっくりなキキキリンだったね。(私は何が言いたい?)

失敗の原因❷ 2018年のニッポンを象徴するような普遍性を感じさせない。ごく普通の貧乏一家がアベ政権下で重度貧困に襲われつづけてやむなく徐々に万引き常習一家へと変貌していく話だったら価値高いかもだけど、そうじゃなくって世の私たちの誰とも似てない特殊集団の話にすぎなかったわけなんで。
大して面白くもないストーリーなんだから、だったら(“他人事としてのお鑑賞”を超えて私たちの行動をちゃんと変えうるような)もっと現実味のある家庭を描くべきだった。

失敗の原因❸ 万引きシーンそのものに何の工夫もリアリティーも華もない。量も足りない。もっともっと万引きシーン満載かと思ってたら、何だこれ程度。ありとあらゆる手口・手さばきで万引きサーカス的に楽しませてほしかった。ヘプバーンのたった一回きりの万引きを100点とすれば、数回にわたったもののこっちは60点程度。
あとさ、私は万引き得意だったんで、この映画の万引きは全然基本ができてなくて情けない。やるならもっと鮮やかにやりなね。監督は万引きした経験ないんじゃない(笑)? ここに具体的なことは書けないけど、もっとさ、コツ&キマリがあるんだよ、、、(企業秘密につき後略)

失敗の原因❹ 安易な若い美女子の使用がヘン。映画の品質とはほぼまったく無関係に、単体としての松岡ちゃんの魅力は最旬感いっぱいだけど、「松岡さんは弾けてる。映画全体は悪い」がかえって鮮明になっちゃってて、株式会社フジテレビジョンの息のかかったキャスティング係たちの狙いのストレート感が哀れ。すなわち、商業映画に必須な「お花一輪」として彼女を連れてきただけ感もろに。


以上、涼しくいろいろ書いたが、現代日本の商業映画としてはこれは平均的な出来ばえ。まあ“力作な”方かな。邦画って本当にレベル落ちてる。。


良かった点❶ コロッケがおいしそうだった。
良かった点❷ ポスターがにぎにぎしい。
良かった点❸ 少年の落っこち方が面白かった。
良かった点❹ 松岡向けのキキキリンのいくつかの台詞。
良かった点❺ 目をこすりながらだんだん泣いてくところ(もしかしたら掌にタマネギの汁を塗っておいたのかも?)