塩辛亭ショッパイ

万引き家族の塩辛亭ショッパイのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

お、、お、重たいわぁ…

虐待、誘拐、貧困、年金不正受給……。社会問題をこれでもかと乗せてるがためにカロリーが非常に高い。見終わった後もなかなか消化できず、心と頭がもたれた状態に。ラーメン二郎の店主ですらきっと同じ感想を抱くだろう。ほんで感情の整理がつくまで、期間限定でコロッケラーメンをメニューに加えるんだと思う。

隠れながら暮らす家からじゃ首を伸ばしても花火は見えないし、盗んだ水着で出かけた海も晴天とはいかない。
それでも、彼らは表情に幸福を湛えている。たとえ他人が認めなかったとしても、「私たちは家族」そう信じていたはず。

夏になり、借り猫状態だったリンの言葉遣いも変化し、家族に溶け込んだかと思えば、祥太に兄としての自覚が芽生えはじめる。。。あぁ…これだけで泣きそうになる。まだ中盤なのに、、危ない危ない。
子役の演出に定評のある是枝監督だが、今回ちょっと凄すぎやしないか? 後半のシーンを先に撮って、本当に虐待したあと、前半部のカメラを回したのでは、と疑ってしまうわ。

だからこそ、後半の家族解体がズゥ・シィーンと重くのしかかる。
ルアーの知識を話す祥太を見て釣竿の盗み方を教えた息子はもういないと悟ったリリーフランキーは、父親からただの万引きおじさんへと戻っていく。
子どもを産めない安藤サクラは「産まなきゃ母親じゃないのか」と強い抵抗を見せるが、その涙には娘を手放さなければならない諦念も滲んではいたのではないか。

結局、最後までふたりは面と向かって「お父さん」「ママ」と呼ばれることはなかった。
それでも、どうしてもあの関係性に〝家族〟以外の呼び名が見つからない。
問題だらけの日本社会のどこかで身を寄せ合い、憂き世を漂うスイミーたちの物語。傑作中の傑作中の傑作。

「生活苦とはいえ、子供に万引きを教えこむ親ってどうなのよ…」というのが唯一のマイナスポイントだった。しかし、公開初日に圧力鍋を盗んだ〝リアル万引き家族〟が逮捕されたってニュースを見て万事解決。オールクリア。よって、評価5.0をつけます。
塩辛亭ショッパイ

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