Kogarath

万引き家族のKogarathのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.5
ここ数年のパルムドール受賞作の流れを汲む、先進国の影に潜む貧困を描いた作品。
6人それぞれがあらゆる社会問題を象徴しているようで、不寛容な現代社会や世間の無関心に対する監督の静かな怒りが伝わってくるようだった。
かといって決して説教臭くならず、彼らの犯罪は犯罪としてフラットに描いているところが良かった。その辺の距離の取り方が上手いなぁと思う。
映像もリアリティがあり、家の散らかり具合や、キレイじゃない食べ方で笑い合う食事シーンなどはドキュメンタリーのようだった。
音楽は細野晴臣先生とのことで期待していたけど、観ている間はすっかりそのことを忘れていた。そのくらい自然。「レヴェナント」での坂本教授の仕事を思い出した。

子役を含めキャストみんな素晴らしかった。特に安藤サクラ。
リンを抱きしめる仕草や生々しい濡れ場、何より終盤の留置所でのやり取り。涙を拭いながら絞り出す言葉すべてが胸に刺さった。

あらゆる嘘と偽物で包まれた"家族"だったけど、そこで生まれた絆は本物だったに違いない。
普通に暮らしていれば後半の高良健吾や池脇千鶴と同じような感覚で物事を考えてしまいそうだけど、そこに至るまでを知っているが故に、あの場面は複雑な気持ちになった。何が正しくて何が間違っているのか、答えが提示されないからこそ観客一人一人が考え、想像することに意味があるんだろうな。

最後に、松岡茉優がいろいろと凄い。JK風俗店や海水浴のシーンでは思わずパルムドール!と叫びそうになってしまった。
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