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万引き家族のakrutmのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.3
カンヌでパルム・ドールを受賞したこと以外はほぼ予備知識を持たずに見たので、初めのほうは貧困と児童虐待を単に描いているように見え、大した映画ではないなあと感じていたが、「万引き」はあくまでも表現のための道具に過ぎず、描きたいことがそこにないことが明らかになっていくにつれて、映画に引き込まれていった。是枝監督が問うているのは、家族とは一体何なのかということ。家族を家族たらしめるものはいったい何なのか?血縁なのか、無償の情愛なのか、互恵なのか?柴田家という「疑似家族」を通じて、通常の血縁に基づく家族という概念を揺さぶり、ある意味で否定しつつ、疑似家族の持つ残酷さや非家族性も提示して、情愛だけでは家族たり得ないことも示している。そもそも、何が本物で何が擬似かを定義することも、実はかなり難しい。

アメリカなどでは、子供の持てない夫婦が養子をもらうことが日常的に行われていることも考えると、文化によっても家族観はかなり異なるだろう。なので、カンヌでどのような点が評価されて本作にパルム・ドールを授賞したのかは気になるところ。ケイト・ブランシェットをはじめ審査委員たちは安藤サクラの演技を絶賛していたが、内容的には何が評価されたのだろうか。そんなことはないと思うが、単純に貧困とか虐待とかを扱っている映画だと解釈されていたのであれば残念であるが。
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