みーちゃん

黙秘のみーちゃんのレビュー・感想・評価

黙秘(1995年製作の映画)
4.0
映画としては地味だけど、いや、地味だからこそ良かった。地味とは言っても当事者にとってはもの凄い出来事で、連鎖で、意外なドラマの展開をみせる。世の中の事件って、こんな背景やきっかけで起きることも多いだろうな、と思った。

◇ここからは鑑賞した方向けです◇

序盤キャシー・ベイツが叩かれるのが衝撃的。暴言だけで嫌な予感はしたが、殴ったり蹴ったりじゃないところがリアルに日常の1シーンで驚愕。あれ、心身ともにダメージが大きすぎて悲鳴すら出ない。こちらまでしばらく立ち上がれない。

大富豪ヴェラが、ドロレスの打ち明け話を聴く時のスタンスも良い。ストーリー的に大きな転機になるわけだけど、友情、同志、共犯者、どれもピンとこない。階級や主従を超えた名伏しがたい関係性が生まれた瞬間。その時のヴェラの様子(急に眼鏡を掛け、刺繍を始める)が秀逸。

そして終盤セリーナが、フェリーの上で少女時代の自分と向き合う場面。この問題を装飾として使うだけの映画とは一線を画し、地に足がついてる。デヴィッド・ストラザーンが本物じゃないかと思うほど上手いので、私はこのシーンを見て、彼が罪悪感を持ちながらも、これは父親の特権で、娘という存在はこれくらいは受け入れて(恩を返して)然るべきだと考えてるフシがある、と感じた。改めて、この問題の根深さと、どれだけ長く被害者を苦しめるか、考えさせられた。

いずれも地味だけど、これが派手なわけはなく、当事者に寄り添わないとできない演出だから、とても印象に残った。