がんがん

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのがんがんのレビュー・感想・評価

5.0
A long time ago in Hollywood far,
far away…

遠い昔、遥か彼方のハリウッドで…


ジャーーーーーーン




映画だ!時は1969年、
リックダルトンは落ち目
のTV俳優で映画スターへの
道も閉ざされていた。そんな彼
の事をスタントマンとして支える
クリフブース。ある日リックの家の隣
に時代の寵児であるロマンポランスキー
監督とその妻である女優のシャロンテートの
夫婦が引っ越してきた。はてさて彼らの運命は…





はい、出ました下半期、および2019年最高傑作!!

IMAXで観てよかった。冒頭のブラピがかじったセロリの咀嚼音の迫力よ!パゴリッッッ!!みたいなすげー気持ち良きかじる音。

あとドッグフードがうんこみたいにドベチャット!!って落ちる音凄い。これドルビーアトモスで聴いたらもっと凄いんじゃ…

IMAXポスターももらえたので家に早速貼りました。60年代風イラストがたまらん。ユナイテッドシネマズで観たのでB5ポストカードももらえましたよ。


まだ生まれてないから60年代のハリウッドの実際の空気感はわからないし、映画リテラシーも高くないからタランティーノ監督が用意した舞台装置のアイテム達もほとんどがわからなかったけど(大脱走くらいしかわからない…)、それを差し引いても間違いなく最高傑作でした。


シャロンテート事件とチャールズマンソンを知らずに観ると楽しめないかもしれない、というレビューをいくつも見たので、一夜漬けですがかなり勉強しました。結果、正解でした。

これを知っていないと、あのひりひりとするカウントダウンの空気や、所々に出てくる描写、そしてエンディングの感動や多幸感は薄まっていたと思います。





以下ネタバレ及び、実際に起きた事件の記載をしていきます。
















ちょうど今から50年前のハリウッド、1969年8月9日の深夜にある悲劇は起こりました。


戦場のピアニストでアカデミー賞を獲った、かのポランスキー監督の妻、シャロンテートが自宅で殺されてしまいました。妊娠8ヶ月の身体で。その日は、まもなく生まれてくる赤ちゃんのために育児室の壁のペンキを塗ったばかりだったそうです。

家に招いていた3人の友人とともに惨殺されてしまいました。滅多刺しにされ、壁には「豚」や「ヘルタースケルター」という血文字が残されていました。これは犯行を悪魔によるものと思わせるため。

この首謀者がチャールズマンソンという男でした。実際の犯行は彼を崇拝するマンソンファミリーの若者達によるものでした。


ビートルズを超えるミュージシャンになることが夢だったチャールズマンソンだが音楽の才能はなく夢破れていました。自身は負け組だと、ハリウッドの勝ち組であるセレブリティ達に恨み辛みを勝手に持ち、いつか自分は革命を起こす者であるという妄想に囚われていました。

ビートルズのアルバム曲「ヘルタースケルター」に狂信していたようで。はちゃめちゃ、混沌、混乱を意味する言葉ですが、ビートルズ自身はイギリスのある公園にある滑り台のことを意味していたそうで。チャールズマンソンの勝手な勘違いにより、ハリウッドにヘルタースケルターを起こしてやると独り狂っていきました。


彼はドラッグとセックスにより若者の女性や男性をたらしこんで信者を増やしていき、スパーン映画牧場という使われなくなったセットの広場を住処にし、ファミリーを増やしていきました。

牧場主であるジョージスパーンの生活とセックスを若い女性にさせて。もう映画のセットとして使われないその場所は、本作でも描かれていたように観光客に乗馬体験を提供して金を稼いでいました。

ファミリーの女性たちは街のゴミ箱をあさりその日の食料を手に入れていたようです。クリフがヒッチハイクしていたヒッピーの女の子にピクルスは美味しかったかい?と聞いたあのシーンですね。


機は熟し、チャールズマンソンがターゲットに選んだのはポランスキー邸でした。しかし狙いは前の住人。

殺害ターゲットが引っ越ししていたことを知らなかったのです。しかし気にくわないハリウッドの金持ちなら誰だっていい、とそのまま惨劇を実行してしまいました。


夫のポランスキーは撮影のためヨーロッパにいたので難を逃れましたが、当時自宅には妻のシャロンと友人3人がいました。

マタニティブルーのために不安定な感情の妻を心配して、友人によく遊びにきてもらうよう頼んでいたそうです…夫の優しさが更なる被害者を増やしてしまったのがもう本当に悔しい…


シャロンテート事件の1週間後、あの伝説のウッドストックフェスティバルが開催されましたが、もうヒッピー文化は終焉に向かっていたそうです。

ヒッピー文化の終焉とともに、テレビの発達により花の都ハリウッドの終わりの始まりがやってきたようです。ラストでリックもクリフも自分たちの将来の職への不安、いつ陰るかわからない人気、そんななんとも言えない空気感がありました。

以後、長髪の若者はカルト殺人狂のアイコンになってしまい、ハリウッドに大きな大きな悲しみを残しました。


これが実際に起きてしまった悲しい事件の概要です。



タランティーノは5年かけて本作の脚本を執筆したとのこと。

リックダルトンとクリフブースという2人の虚構の主人公を立てて、もしもシャロンテートが殺されることがなかったら…そんなお伽話を作り出しました。


マーゴットロビーが演じるシャロンテートが自身の出演作を映画館で楽しそうに鑑賞している。観客が笑ったり、驚いたり、そのリアクションに嬉しくも恥ずかしく、そして誇りに思っているあの表情は胸に込み上げるものがありました。

またパンナムの飛行機が二度出てきたのは、マーゴットロビーがパンナムのドラマに出ていたそうで、そこからのモチーフでしょうか。あのパンナムの制服がたまらなく好き。きゃりーぱみゅぱみゅも昔コスプレしてました。

とにかくシャロンはいつでも、誰とでも純粋に笑い、音楽に身を委ね、ありのままの幸せを受け入れていました。そんなシャロンテートの美しさを完璧に演じていました。


本作はまさかのラストの展開により、シャロンが死ななかった世界が描かれました。きっとあの後はリックと楽しく会話をして穏やかな夜を過ごし、その後かわいらしい赤ちゃんを無事に産んだのでしょう。シャロンがペンキを塗った部屋で健やかに育ったことでしょう。


2時間半以上に渡る映画でしたが、ストーリーが動き出すのはラスト13分のみ。あとはタランティーノお得意の会話劇と、ゴキゲンな音楽、60年代の空気をひたすら堪能する作品。

ですが、もっともっと観ていたかったです。すぐに泣くリックはかわいすぎるし、車のハンドルを握っているだけなのにクリフはカッコ良すぎるし、シャロンはどのシーンも幸せな日常を描かれていて、この3人をもっと観続けていたかった。


暴力表現は過去作と比べると抑えられていたように思えましたが、ラストは怒涛のバイオレンスシーンの連続でした。

男性のシンボルである股間へ執拗に噛み付き、女性のシンボルである顔をボッコボコにし…マンソンファミリーに対するタランティーノ的復讐なのかなと感じました。

むしろヤッチマイナー!!的な勢いのある火炎放射器からの真っ黒焦げは、もはややり過ぎで爆笑ギャグでしかないし、圧倒的にボッコボコにする暴力的なブラピはタランティーノ節がめちゃくちゃ効いてました。


まさかの一瞬バットマンのテーマがエンディングで流れるのは、昨日発作的に書いたダークナイトライジングのレビューが何か虫の報せだったのか。

エンドロールの最後までオマケたっぷりに笑わせてもらいました。


ちなみにチャールズマンソンはルーシーモノストーンの元ネタなのだろうか。かのマリリンマンソンはマリリンモンローとこのチャールズマンソンから名前を取ったそうですが。

調べれば調べるほどこの男、ルーシーモノストーンに酷似する。ヒッピー、カリスマ性、集団自殺、フラワーボム。久々にサイコを読みたくなりました。




本作のラストは、これは史実と違うともしかしたらアメリカ人は言うかもしれません。

でも、これはタランティーノが編んだお伽話なのだから。

こんなif…があってもいいんじゃないでしょうか。

作り物のお話の中だけでもシャロンは幸せでいれたから…



Once Apon a Time in Hollywood


むかしむかし、ハリウッドで…
がんがん

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