がんがん

バービーのがんがんのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
5.0
「Barbie」オスカーノミネート8部門おめでとうございます!


あまりに嬉しくて1年ぶりに更新しました。まさかのマーゴッが主演と、グレタさんが監督ノミネートされていなかったのは衝撃でしたが…ゴズリンが二人を称えたコメントは熱かった。

「Barbie」と「オッペンハイマー」と「哀れなるものたち」との三つ巴戦になりそうですが、ぜひ「Barbie」には作品賞獲っていただきたい。そんな祈りも込めてこの作品の素晴らしかったところをちゃんと言語化したくなったので、つらつらと書いていきたいと思います。




「Barbie」における3つの主題



①女性の生きづらさを逆説的に描く

第一幕
女性ファーストな不思議の国「バービーランド」

大統領、宇宙飛行士、科学者、パイロット、工事職人などなど、ほぼ全ての仕事が女性で成り立っている架空の国バービーランド。ケンたちは行き場がなく、アイデンティティを失っている。これは逆説的に現実社会において、女性のあらゆる権利が奪われ、活躍の場を失ってしまっているメタファーになっている。ガールズナイトにケンたちの居場所は全くない。それはつまり現実ではどういうことが起きているかわかっていますか?と我々に問いかける。

あくまで作り物のファンタジーな国という設定なので、ほとんどCGではなくちゃんとセットを作り込んでいることによりファンタジー感を増している。第二幕の現実社会へ切り替わったところで、バービーランドの画面の異質さが際立つ設計意図であるはず。第三幕では現実と架空が入り乱れて画面にカオスを起こしている映像演出も素晴らしい。納得の美術賞ノミネート。


②男性優位社会へのアンチテーゼ

第二幕
マッチョイズムがはびこる現代社会

男性が弱みを見せてはいけない、泣いてはいけない、強くあらなければならない。スーツを身にまとい、高級車を乗り回し、金融を動かして世界を牛耳ることができる。そんな現実社会に衝撃を受けたケン。バービーランドと真逆なその世界のルール、秩序に傾倒してしまう。

ケンランドを建設し、(これはネイティブアメリカンから領土を奪って王国を築いたアメリカへのメタファーだったのかも)バービーたちを洗脳してしまう。そんなバービーたちを救うヒーローとなったのがマテルの社員である人間であるグロリア。母として、デザイナーとして、そしてバービー人形の1ファンとしてバービーランドを救う手助けをする。人形と人間という異種なる存在が手を取り合う素晴らしいプロット。


③戦争の虚しさと愚かさのメッセージ

第三幕
男たちの戦争の無意味さと選挙の大切さ

ケンとケンによって起きたシビルウォー。男性と男性が権利を主張し出すと、互いの武器を取り合い奪い合う。80年代風ダンスバトルという無邪気であり、気味の悪さも相持つ奇想天外で可笑しなシーンにより戦争の愚かさを表現する。民主主義の基本である選挙によってバービーランドの女性たちは権利を取り戻した(ケンにゴッドファーザーを語らせてるうちに仲間を増やすという、ちゃんと選挙におけるロビー活動まで演出しているところが巧すぎる)

バービーたちとケンたちの争いは決して暴力で決着をつけない。あくまで話し合い、議論の場において終結をさせる。恋愛や性欲で誤魔化すのではなく、大事なのはちゃんと人間としての本質を模索すること。だからケンからのキスを保留にして、お互いのことをもっとちゃんと知ろうと提案する。ケンは「バービーの恋人のケン」でなくて良いから。「○○のケン」「○○のバービー 」とお互いちゃんとアイデンティティを探そうとディスカッションをして終わる。

映画のラストにバービー は婦人科を受診してこの物語は幕を下ろす。産婦人科ではなく、婦人科であることに意味がある。人形だったバービーがヒトとしての身体の構造、人間としての特性を学びに行くために。つまりは性別や人種が違えども、己を理解することから始めることが大事であるというメッセージを最後に残した。


白人の美男美女であるマーゴット・ロビーとライアン・ゴズリングがバービーとケンなのが本当に素晴らしいキャスティング。ともすれば二人ともstereotyped actorとも揶揄されてしまいそうな容姿を持っているが(作中でもマーゴッがこのセリフを言っても説得力ないよね、とセルフツッコミしてる)その内面はたくさんの人々を魅了する演技力や人間性を備えている。だからこそこの物語に深みが付与された。

以上、本当に素晴らしい作品です。どれだけの賞を獲得することができるのか、3/10のアカデミー賞授与式が楽しみです。





ちなみに去年の🦺作品はこんな感じでした。あんまり作品数観れなかった…とくにミニシアター系の作品まで全然観れなかった…


2023年🦺作品

🥇 GotG3
🥈 バビロン
🥉 Barbie
4位 エブエブ
5位 マイエレメント
6位 窓ぎわのトットちゃん
7位 福田村事件
8位 フラッシュ
9位 マーベルズ
10位 JWコンセクエンス


ではまたどこかで…
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