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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3のsanbonのレビュー・感想・評価

4.8
「MCU」史上最高のフィナーレ。

蓄積された物語の厚みで「エンドゲーム」を超える作品は現時点でこの世のどこにも無いと思っているが、よもや同じMCU作品の一単独作で、ここまでの感情の揺さぶりを体験させられるとは思ってもみなかった。

正直、単独作としては個人的に「スパイダーマンNWH」を超えた。

普段は、バカな事しかやらないし、言わないし、そもそも登場人物全員バカばっか。

周りの人達も、どこか互いが互いを貶すような態度をいつもはとったりしがちだけど、時折絆を問われるような場面になると、これまでのおふざけムードが一転、全力でそれを守ろうと臆面もなく奔走する。

仮にそれによって自分が傷付こうと、ボロボロになる事を厭わないその姿に力強い感動を覚える。

そのギャップ、その振れ幅こそが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の根底に根強く張り巡らされている魅力なのだと思う。

そして、そのようなギャップの魅力に今作は満ち満ちている。

喧嘩するほど仲が良いとは、正にこのシリーズの為にあるような言葉だが、物語の大半を喧嘩するか馬鹿にするかしながら進める今シリーズお決まりのノリだって、シリアスな展開に突入した際の感動を最大効力で発揮する為の仕掛けだし、普段は仲の悪い素振りを見せているのに、いざとなると誰よりも心配して感情を露わにする関係性なんかも正にそれだ。

というか、そもそもこの作品のコンセプトそのものがギャップをテーマとして取り入れている。

だって「おちこぼれが銀河を救う」のだ。

これこそまさしく、宇宙規模のギャップだろう。

また、キモいビジュアルに愛らしいキャラクターを演じさせるギャップも、今シリーズ特有の常套手段と言える。

特に今作は「ロケット」の実験台仲間として3匹の動物が過去の回想に登場するのだが、容姿はむごい実験を繰り返された痕跡が痛々しい悲惨な姿となっている反面、性格は非常に明るく柔らかで、青空をいつか見たいと夢を語るとても仲間想いな内面の持ち主ばかりで、過酷な境遇とその無垢さのギャップにはかなり胸を締め付けられる。

そして、そんな幼気な動物達に非道を繰り返す今作のヴィラン「ハイ・エボリューショナリー」が、一縷の隙もない完全無欠の悪として徹底した描かれ方をされているのがまたいい。

冗談抜きで、MCUヴィラン史上最悪のキャラクターだと思う。

そのくらい、敵に同情の余地が全く無い分、ロケットや被害者達には全力で感情移入させられるし、こんな奴にささやかな願いすら踏みにじられ、尊厳を冒涜され続ける展開には涙無しには視聴不可能であった。

なにより、ありのままを受け入れて家族となったGotGのメンバーに、ありのままを許さないハイ・エボリューショナリーをぶつけるという、見事な対比であり、ある意味でのギャップを、この完結編に用意するのがこれまた粋である。

また、過酷で壮絶な過去は、豊かで幸せな現在というギャップがあるからこそ、より感情に訴えるものがある。

これまで、ロケットにはなにかある事は度々ほのめかされていたが、まさかそれがここまで凄絶なもので、自分が死の淵に立たされた事でその因縁と再度向き合う事になり、それを救ってくれるのが現在の家族と、過去の家族というのは最高にドラマチックな演出である。

家族とだから過酷な状況でも立ち向かっていける。

辛い状況でも家族がいるから乗り越えられた。

この、対象を同じとしつつも現在と過去で状況が全く違うコントラストを、交互に追体験出来る仕掛けは本当に最高の一言だった。

そして、ロケットが仲間達の助けによってこの世に引き戻されるところからはもう涙腺崩壊不可避。

ロケットの声を聞いて思わず涙ぐむ「ネビュラ」から「ヤカの矢」を上手く操れない「クレグリン」の前に現れる"あいつ"から「俺はグルート」以外をしゃべる「グルート」から「良い犬」から「ロケット・ラクーン」から、もう何から何まで琴線触れまくりの号泣展開の畳み掛け。

なのに、ラストはあんな最高に楽しげな場面で締めくくってくるそのギャップにまた涙。

過去と向き合う事を決意して、前を向きはじめたそれぞれの決断も本当に最高の幕引きだったと思う。

「ジェームズ・ガン」って、なんでこんなに人の感情を揺さぶる術を心得ているのだろう。

本当にいいものを観させてもらった。

今年のGWは傑作ばかりで本当に凄かったなあ。

休み1日しかなかったけど笑
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