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トゥルー・ロマンスの海のレビュー・感想・評価

トゥルー・ロマンス(1993年製作の映画)
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あなたにならわたしのすべてをあげられる。あなたに出会えるならわたしは、いつか二人が別れたって惜しくはない。無限に続く道を見つめながら、終わった恋や言えないことばかりが愛しく思い出されるのはたぶん、うしなった以上の本当の恋もロマンスも、わたしにはまだないからだ。この映画、「10代のうちに観ときなよ」っていつか勧められたうちの一本だった。そう言われてしまったら意地でも観ない性格なので結局今というタイミングになってしまったわけだけど、でも一つ間違えてる、正しくは「本気の恋を経験してから観なよ」だと思った。もうわたしは、その本気の恋の相手にはきっと二度と会えないんだけど、それでも本当に時々、わたしにある何もかもをあのひとにあげとけばよかったって後悔する。「後悔しなかっただろうな」って後悔する。なんで肝心なときにかぎってわたしは臆病で、従順になってしまうんだろう。脱ぎたい服ほど脱げないから泳げないし、いきたい場所ほどいけないからそのまま日が暮れるし、はっと「永遠」の文字を思い出すたびに理性が「一瞬」と書き換える。わたしはきっと死ぬまで一生、誰かのための人殺しにはなれないし、血まみれの恋人に肩を貸しながら車を走らせることもない、映画の中を永久に羽ばたき続ける天使みたいな女の子にはなれない。本当はいつも思ってるけど、誰かが語るロマンスなんて、わたしにはだいたいくだらないんだ、どんな男女二人が、どんな部屋でどんな電話ボックスでどんな姿勢でどんな気持ちで何をしてようが、どうだっていい。それが「わたし」と「あなた」になって、わたしのものになって初めて、どんなときもどんな場所もどんな想いも視線も特別で、ああこれが本物だって感じる。信仰みたいだ、って思う。トゥルー・ロマンスはアンチ・ロマンスだ。アンチ・ロマンスはトゥルー・ロマンスだ。いつか、いつかわたしは、愛するひとのために優しい嘘をつくだろう、泣きたいときにこの胸をかすだろう、眠れない夜にも昼にも歌を歌ってあげるだろう、いつかわたしは、きっとあなたの、可愛い可愛い天使になるの。
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