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あしたの少女の海のレビュー・感想・評価

あしたの少女(2022年製作の映画)
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眠る時間さえ惜しいほど忙しい毎日の中で、通勤の時間、浴槽で目をとじてる時間、ベッドに入る前の時間、そういうわずかな隙間に「元気にしているんだろうか」と思い出すひとたちが、ひとりずつ、ソヒの姿と重なってこわかった。連絡先さえ知らない人もいるし、連絡しても、返事はこない気がする人もいる、元気じゃないのに「元気です」って言う人もきっといるし、わたしが送ったメッセージをひらくことすらもうできない人も、もしかしたらいるのかもしれない。ソヒやユジンのように、自分自身のことではないことにまで怒って、社会のために戦って、そして弱っていくひと、少ないけれどちゃんとこの世界にいる。本当にいるよ。わたしが好きになってきたひとの多くがそうだった。そういうひとたちは、やさしいという言葉じゃ、正体がなさすぎて、申し訳なくなるくらいにやさしい。知らないだれかのためにほんとうに泣いてあげられるのは、知らないだれかのためにほんとうに怒ってあげられたひとだけだ。想像してみる。苦しんで傷ついて泣き疲れた日、ふっとわたしが姿を消して、もう二度と戻ってこなかったら、だれがわたしのこの足あとを追ってくれて、だれがわたしとおなじ風にふかれてくれて、だれが、わたしの見ていたものをおなじように見ようとしてくれるだろうかって。そしてそれを他のだれかに伝えようとしてくれるだろうかって。ひとりでもいたらいい。そのひとりに値するちからを持っている映画だった。今「仕方ない」ってあきらめるしかないことを、それでもなお見つめ続けていくことには、絶対に意味がある。いつかあなたが苦しむとき、死にたくなるほど苦しむとき、わたしはそのために怒れる、泣ける人でいたい。わたしが話すことをやめないのは、それが光だって信じているからだ。
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