miumiu

キンキーブーツのmiumiuのレビュー・感想・評価

キンキーブーツ(2005年製作の映画)
4.7
舞台版を「松竹ブロードウェイシネマ」観たので映画版の感想を再ログ。
(映画版もちゃんと再鑑賞した。)
後半に舞台と比べての、映画ならではの感想を追記します。(たぶんネタバレしちゃうと思う、ネタバレNGの人は後半は読まないで)



(以前の感想)

実話ベースの、靴工場再生ストーリー。
父の急逝で経営が火の車の老舗靴工場を継いだチャーリー。
リストラした従業員に「ニッチな市場を開拓するくらいのことをしろ!」と言われ、偶然知り合った女装家ローラからインスピレーションを得て、ドラァグ・クイーンのブーツ作りに賭けることに。

これは好き!
ドラァグ・クイーン、ローラのパフォーマンスから元気をもらえる!
工場経営も何もかも自信のない情けないチャーリーと、美しく着飾っているときは強気なローラの組み合わせが楽しい。
ローラの実は繊細な内面も描かれていて、コメディ、サクセスストーリーだけじゃない深みがあった。

再演重ねている舞台版が元祖かと思いきや、映画が先だった。
キウェテル・イジョフォー、他の映画ではフツーに男前なのに、ローラは表情のひとつひとつが女性そのものでとってもチャーミング! 歌もパフォーマンスも思いきりがいいし、俳優さんってすごいな…!
ジョエル・エドガートンも、格闘家を演じている『ウォーリアー』を先に観ていて大好きな作品なので、今作ではまったく違う弱気な役が新鮮だった。
ローラの歌のサントラ欲しい!


(追記)

舞台版を松竹ブロードウェイシネマの企画上映で鑑賞。
舞台版はとにかくローラが強くてポジティブ、作品全体がショーのように明るくパワフル、コミカルさも利いていて楽しい!
が、映画版がもともと大好きな私は、映画の中での好きな要素が削ぎ落とされていてちょっと残念に感じた、というのが本音。
(ミュージカルはミュージカルとして素晴らしいから、別物として評価)

映画版は、女装家? クィア? なローラの繊細な内面をキウェテル・イジョフォーが丁寧に表現して演じていて、そこが本当に好き。
舞台版はローラが明るくパワフルすぎた…
(それがミュージカル演出に合っていて良いし、観客もそれを楽しんでいるんだ、というのはわかる)

ブーツ作りを通じて友情を育みつつ、終盤で対立してしまうチャーリーとローラ。
舞台版はミラノでのプレゼンを兼ねたショーをどんな演出で見せるか、という、あくまでもビジネス上での対立になっている。
映画版は、チャーリーがローラのアイデンティティを否定するような、決定的に傷つけることを言ったのに(人によってはこの場面だけで「チャーリー大嫌い、この映画嫌い」となりそうなほど酷い)、それを許すローラの強さと優しさが描かれるから尊いわけで。
そこを変えた以上、英語版と舞台版はやっぱり別物なんだな… と感じた。

台詞もストーリー展開も、中盤までは本当に同じなのに、ローラの立ち位置とキャラクターの演出&解釈だけで、こんなに物語の雰囲気やテーマが変わるんだな… というのは、ある意味良い学びになったし面白かった。

それにしても、キウェテル・イジョフォーがドラァグ・クイーン役というのは、何度観ても今からすると意外ですごい。
miumiu

miumiu