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殺人者の記憶法:新しい記憶のmireiのレビュー・感想・評価

3.5
「殺人者の記憶法」ウォン・シニョン監督 2018

Netflixにある韓国映画を上から順に見ていっている選んでいると、自分の好みのものばかり見てしまうのでなるべくそうせずただただ上から順に見ていってる、そうするとこういう映画にも出会ってしまう、サスペンススリラー映画だった。
この映画はアルツハイマー認知症を患ってしまう老人のお話であるが、彼は元々大量殺人を行っていた男であった。
その記憶が遠く遠く昔の記憶として封印されている、そして彼には一人の娘がいる、一人の娘を男手一つ育てていたのだ。
ある日、車を走らせていたら接触事故を起こしてしまう、そしてその接触事故を起こした相手の車から血がポタポタと落ちている、彼は鹿の血と言うのだが、主人公は気づいてしまう、それが人間の血である事を。遠い昔に封印されていた殺人者としての記憶が蘇ったのだ、そして彼は直感する、こいつは"殺人犯"であると。
ちょうどその町では女性が被害者の連続殺人が行われていた。その犯人が彼であると老人は直感したのだ、そしてその相手が自分の娘と交際していた。
彼は娘を守らなければならない、なんとしてでも。
そこから彼は奮闘していく、我々はそれを観賞者として彼の後を追って行く。そして我々は途中で疑ってしまうのだ、彼の記憶はどこまで正しいのだろうか、彼の妄想ではないのだろうかと。
なぜかというと彼はアルツハイマーだからだ、まるでアメリカ映画の「メメント」を観賞しているような感覚に陥る、今が何時でいつの話をしているのか、彼が毎回録音しているその話は妄想なのか、それとも本当のことなのか、「メメント」の刺青のようなものだなと観ていて感じた。
時系列の把握がとても難しかった、彼が犯人に襲われている時、いきなり飛んで場面が変わる。彼は過去にいるのか、襲われた後の世界にいるのか、これは一度観賞するだけではなかなか理解ができないと思う。
空気感がかなり重くずーんとしている、話にメリハリが無いため途中で疲れてしまうことがあった。
最後まで何とか頑張って観賞したが最後もイマイチだったのだ。
連続殺人犯を最終的には殺し、自分の娘を助ける事は出来た。
その娘は自分の父が昔の連続殺人犯だと知り、心に傷を負ってしまうがそれでも父を支えて行くと決める。今、目の前にいるのは大量殺人犯ではなく、ただただ認知症を患ってしまった自分の父親なこだからと。
最後暗いトンネルから、彼はゆっくりと出てくる。
目の前には真っ白な雪景色の世界、どういう意味があるのだろうか、そもそもこれは彼の妄想なのか実際に施設を抜け出しているのか今でもまだ分からない。
なんだかひどく難しい映画ではあったが、韓国映画の成長を感じる事はできた気がする、韓国が映画という物をどう考え、どう捉え、どういった役者の本気の芝居を望んでいるのか。
簡単な物語ではない、物語の核心というものは何なのか、人々にどう伝えるべきなのか、観た後に気が狂ってしまう人、ニヤリと笑ってしまう人、ぞわぞわと震え上がってしまう人、いたのではないだろうか。
いずれにせよ韓国映画は確実に成長している。
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