Masato

愛しのアイリーンのMasatoのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
4.5

今年2本も吉田恵輔の新作が観れるとは思わなかった。またまた打ちのめされ、答えのないものに深く考えさせられた。
予め断っておくが、衝撃的すぎて文章がいつもより曖昧かつ稚拙になっている。

ヒメアノ〜ルからファンになった私めの吉田恵輔の良いところは、表面的には笑いや暴力やエロスで掻き乱されているが、根底には人と人を繋ぐ「愛」が確かにあるということ。ぶっちぎりなエネルギーを持った超展開でありつつも、最後の最後に観る人の心の中に温かみをソッと置いていくのが素晴らしい。私はこういう作風が大好きで仕方ない。

「犬猿」に続き、人と人の間にある見えないものを描き出した監督。今回も不器用すぎて悲しくなるほどの主人公。主人公と観ている人が近くなれば、突き放し、また近くなれば、突き放し、また近くなる。蹂躙されるたびに、そのやるせなさに哀しさを覚える。なぜこうなってしまったのかと、見えるもの(金やセックス)しか手に入れることができない男があまりにも哀しすぎた。

見える金を持ち、見えない愛を求めていた主人公岩男。見えない愛を持ち、見える金を求めていたアイリーン。愛を持って家族を救うために愛を売るアイリーンは、それでも心は売らないと主人公からの愛を拒否する。そこで、彼女に葛藤が生まれる。その葛藤が全てを巻き込んでいく。岩男も岩男の母親もパチンコ屋の同僚もなにもかも…。愛とは何なのだろうか?きっと答えはないと思うが、手探りで見つけていくものなのだろう。フィリピーナであろうが否定されるものではなく、歪んだ愛であっても、根っから否定されるものではない。
この「愛と金」はこの映画だけの問題ではなく、私たちの家庭にもある。今一度、見つめ直すといいかもしれない。愛とは何なのかを。

ヒメアノ〜ルに続いて、今作もとにかくエロス(性愛)とタナトス(死・暴力)を混ぜ合わせている。吉田監督のこの誰も観たくないアブノーマルな描写はいつも以上に物凄く、尋常じゃないパンチを与えていく。人によっては生理的に受け付けることはできないだろう。だからこそ、最後の最後でエモーショナルになり、泣かされるのだが。そして、笑っていいのかの線引きが曖昧なブラックで下品な笑いがいつものように多すぎて最高に面白い。


安田顕の演技が最高だった。死んだ魚のような目に幸せそうな目に狂気の目。変幻していく形相に感嘆とさせられた。あの変態ぶりは変態仮面を思い出す。今年ベスト級の演技。ナッツシトイというフィリピンのモデルが可愛く、インスタグラムを見たらさらに可愛くて好きになった。あの古賀シュウが出てて笑った。やはりなぎら健壱に似てる
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