Ricola

芳華-Youth-のRicolaのレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
3.7
壮大な背景を持つストーリーではあるが、青春ならではの若者たちの抱える繊細さがちゃんと描かれた作品だった。


特に前半は、鮮やかな映像によって若者たちの輝かしい青春の日々が綴られる。
日々の厳しい練習や喧嘩もあるけれど、かけがえのない仲間たちと青春を謳歌している。

そんな青春を感じられる時間には、いつも水がそばにある。
水遊びやプールでの自由時間はもちろん、突然の雨に降られたって皆と過ごす時間だから楽しいのだ…。
誰かを思って走るのも、プールサイドを通過するのだ。

大勢の人がいるシーンや状況把握を観客に促すシーンでは、辺りを見渡す流麗なカメラワークが効いている。
例えばシャオピンが文公団に入団に来たときの、練習風景と休憩の若者たち一人一人の様子をカメラが追っていく。
また、シャオピンが大勢の前に立たされ、その結果皆の戦意を鼓舞することとなるときもカメラは辺りを見渡すように動くのだ。

作品の後半では、輝かしい青春の日々から一転、戦争の恐ろしさを目の当たりにする。
目の前でどんどん仲間が殺されていく。
戦士たちを後ろから追いかけるカメラのおかげで、臨場感を味わえる。
草むらをともにかき分けながら進むなかで、草が体に当たるような感覚まで感じ取れるほどである。
血が噴き出し、肉片が飛ぶといった残酷な描写を含め、そのおぞましい戦場の様子を長回しで映す。
まさに地獄絵図といった状況下において、リウフォンの苦しそうな表情が、太陽の光の中で舞うホコリやらで美しく見えてしまうのは、このおぞましい状況に対する皮肉だと感じる。

この作品において、赤い布の存在感はかなり大きい。
舞台で振りかざされる、中国の国旗を表しているであろう大きな赤い旗。
さらに、戦場において血でまみれた布ももちろん赤い。
赤は国家を表しているはずであり、若者たちはその国家にずっと身を捧げてきたのだ。

この作品は群像劇であるが、リウフォンという模範兵と彼の後輩のシャオピンが、ストーリーの中心である。
スイによるナレーションが少々説明的過ぎるとは思ったが、物語の中心を担う二人のいずれかではないだけまだマシだったかもしれない。

刹那的な青春時代の美しさと、それを奪った戦争の愚かさ。
激動の時代を生き抜いた若者たちの成長と、彼らの心情までもが丁寧に描かれていた。
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