こたつむり

キュクロプスのこたつむりのレビュー・感想・評価

キュクロプス(2018年製作の映画)
3.7
♪ 揺るぎ無い時間の重さと
  過去の亡霊に追われる

キュロ…キュプロ…キュクプロ…。
あー。言いづらいタイトル。キュクロプスはギリシャ語読み。英語で言えばサイクロプス。と知っていれば混乱しないんですけどね。

だったら、最初から英語にすりゃいいじゃん。
なんて考えてしまう僕は“侘び寂び”を理解していないのでしょう。「これはどういう意味なんだろう」と考えさせる一瞬が作品にキラメキを与えるのです…たぶん。

何はともあれ、本作は自主製作映画。
知名度の高い役者さんは出演していませんし、ロケ地の数も最低限に絞り込んでいることは明白。美術関連も出来る限り予算を抑えているのが伝わってきます。

しかし、映画の質は予算の多寡ではありません。大切なのは監督さんの熱意であり、その熱意に動かされるスタッフの技量。本作は十二分に“それら”が兼ね備わった佳作でした。

ジャンルとしてはサスペンス。
殺された妻の復讐に身を焦がす男の物語。
正直なところ、題材としてはベタです。でも、監督さんの熱意があれば大丈夫。物語終盤にかけての盛り上がりは大作映画に勝るとも劣りません。

というか本当に自主映画ですか?
確かに工夫の跡は透けて見えるんですけど、それでも“素材”は一級品ばかりじゃないですかね。特にサイコな役柄を演じた“あの人”の凄みは笑えるほどに見事でしたよ。

ただし、難点もクッキリと明確です。
例えば、物語前半の筆致は、監督さん自身が“ノッていない”ことが見え見えであり、睡魔に襲われるレベルでした。なんというか、主人公の扱いが雑なんですよね。気持ちは分かりますけど。

思うに、こういう部分を誤魔化すために“予算は多い”ほうが良いんでしょうね。知名度の高い役者さんなら“既存の印象”などで“間を持たせる”ことが出来ますものね。

まあ、そんなわけで。
低予算映画を許容できるならばオススメの逸品。違いの分かる大人ならばビターな後味が沁みると思います。
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