Habby中野

TOURISMのHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

TOURISM(2018年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

こんなにもタイミング、というか人生にポイントのようなものを感じたのは初めてだ。今年は印象的な旅をして、そのことに関する映画や本を誘われるように読み、そしてまるで着地点かのようにこの映画を見た。「TOURSIM」観光、観光客或いは旅行案内、のような意味。
ブックオフ、ツタヤ、ABCマート、イオン。日本、その地方都市から始まるその時点で、「サウダーヂ」を想起させ、後の戦争記念公園での……いやいやこれはやめとこう。
何も知らない、具体的な目的もなくでも生き方はあり若い普通の若者、普通の若者とは全員のこと、が偶然的で無知で自由な旅をする。旅の本質のようなものを感じたのは、彼女らが無知でありながら自らの理由で旅先を選んでしまうこと、自己のメディア、自撮りやSNSの範囲内で行う「自己の移動」としての旅、そしてUberを使いSiriを使い、マーライオン「一応撮っとく?」、ユニクロ「イオンモールにあるよね」、戦争記念公園「これ何だろう?」。そこに弱々しく食い込む砲弾の音は、薄っすらと聞こえ揺らいだのみで消えていく。旅することがどうあっても未知の世界との遭遇、それに嫌というほど自分の存在が反射するということを、諦めのように清々しく描く。映画自体がそれを認めて加担し、もはやそれが映画じゃなくなってしまうことに賛同している。撮ることや切り取ることを優先した撮影。技術でなくその行為と、そこに映る存在。もはやこれは映画ではなくその閉鎖性において旅そのものじゃないかと、字幕を読みつつ、あの終わりそうにないバンドの演奏を聴いて、スクリーンに反射する自分を思った。
着地点と書いたが、この映画自体は着地点を失い、飛び立った空中でじっと息をしている。iPhoneと友人という自己世界の片割れを失くし、その一つだけを見つけて。
突然の終わりは「終わっていない」ことの反射だ。自己の世界の移動、そしてその喪失と再会。その先をどう考えるかやね、バンコクナイツといい、いまめちゃくちゃ問うてくるやんけ。
シンガポールは修学旅行で行き、初めてぼくが旅の不安や不思議を感じた地であり、やはりマーライオンを見て「思ったより、、、笑」となった。あの時暑くて息苦しくて、ホテルに帰りたいと早々に切り上げた中華街に彼女たちはもしかしたらあの2010年のまま張り付いて帰らず、迎えるようにあってくれたのかもしれない、と思い上がることができて今良かった。また行きたいなシンガポール、マリーナベイサンズを無と化す世界一の造形美SUMIREちゃんには会えるかな。
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